手乗りヒナを育てる時、ほとんどの方がプラケースを育雛ケースにして保温電球を使っている方が多いです。
病中・病後の鳥もプラケースに隔離して 同様に保温する場合も多いですが「それ、リスキーですよ」というお話です。
インコのプラケース保温は危険!ヒーター火事・事故・やけどの防止法
育雛や病鳥の一時隔離などに便利なプラケースですが、雛と病鳥はほとんどのシーンでヒーターを使うので、箱型容器暮らしの住まいにプラケースは向いていません。
インコを隔離して保温したい場合にいちばん適しているのはガラスの水槽です。
プラケースを飼育容器に使うメリットは?ガラス水槽・アクリルケースとの比較
インコの隔離空間の住まいに使われるのは、プラケース、ガラス水槽、アクリルケージケースです。
これらのメリット・デメリット・使う時の注意点を紹介します。
プラケース暮らしのヒーター併用はおすすめできない
プラケースはガラス水槽やアクリルケースに比べると非常に安価で簡単に手に入れることができ、特大サイズでもおおむね1500円前後から購入できるため、最もリーズナブルで身近です。
また、プラケースは基本的に軽いです。
特大サイズのプラケースでも、同サイズのガラス水槽やアクリルケースに比べると非常に軽く、持ち手がついているタイプも多いので持ち運びにも便利です。
- 軽い・値段が安い・入手しやすい
- 形状によっては積み重ねて使える
- 強度が低い。傷つきやすく衝撃に弱い
- 持ち手がついているものもあり移動に便利
- 熱に弱い…ヒーターとの併用をメーカーが推奨していない
- 紫外線に弱い
- 耐久性が弱く長期使用に向かない

ただしプラケースはガラス水槽やアクリルケースほどの耐久性はなく、長期使用には向いていません。
安価で入手が簡単、移動も楽であることから、プラケースを雛や病鳥の飼育容器に使用する飼い主はいちばん多いのですが、ヒーターとの併用はおすすめできません。
プラケースは熱に弱く、プラケースメーカーもヒーターとの併用を「推奨しない」と言い切っているほど 耐熱性に欠けます。
簡単に燃えたりはしませんが、プラケースがヒーターによる熱で変形してしまった事故や、溶解や焦げから生じた有毒ガスを吸い込んだ鳥が死亡する報告が多発していますので、熱源との併用には注意が必要です。
ガラス水槽なら工夫次第でヒーター保温が安全に行える
保温効果が最も高く、またヒーターで最も気を付けるべきはひよこ電球(保温電球)ですので、ヒーターを併用する箱型容器住まいにはガラス水槽がおすすめできます。
- 重い。値段はプラケースより高いが、アクリルケースより安い。
- 持ち運びができない・移動がむずかしい
- 傷つきにくく、耐久性が高い
- 経年劣化が少ない…ガラスの損傷よりも接着部分の劣化が多い
- 長期使用してもあまり透明度が変わらない
- 衝撃に弱く割れやすい。割れ方によっては粉々に砕けることがある
- 直射日光が当たっても変形しづらい

保温電球の表面温度は最大160℃前後になりますが、電球には保温カバーをかぶせて使用するため 鳥が触れる側面温度は50~60℃くらいです。
成鳥なら厚い羽毛に包まれている体がその熱でやけどする可能性はほとんどありませんが(保温電球カバーの上に乗れば 足はむき出しですから低温やけどします)雛の場合は羽が生えそろっていない子が多いので 電球のそばにすり寄ってくると危険です。
そこで以下に紹介する2つの方法のどちらかで 安全に育雛することをおすすめします。
【雛】ガラス水槽に仕切りを入れて空間を二分した雛鳥の住まいを作る
ガラス水槽内に保温電球を設置するなら 保温電球カバーを他のカバーで覆うことよりも、パーテーションやセパレーターで内部を二分するのがおすすめです。
イメージとしてはこんな感じで
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水槽内を2つに仕切り、片方にヒーター、他方に雛を入れ、雛をヒーターから完全に切り離します。
これなら水槽内の空気が温まるので保温は問題ない上に、雛がヒーターに近づきすぎてやけどする恐れもありません。
【雛】大小2つの水槽を用意して入れ子の二重構造にした雛鳥の住まいを作る
もうひとつはコストと物理的なスペース問題が生じますが、水槽を大・小2つ用意して入れ子の二重構造にし、雛がいる空間と電球の空間を完全に分けてしまうことですね。
実質的にこれがいちばん安全な方法です。
【病鳥・老鳥】水槽暮らしの成鳥は保温電球による低温やけどに注意
成鳥の場合は保温カバーに寄り添う程度ではやけどの恐れはほとんどありませんが、保温カバーの上に乗って暖を取ると高確率で低温やけどを発症します。
こちらは低温熱傷を起こしたコザクラインコの足です。布の袋に包んだ使い捨てカイロの上に座っていてなりました。袋は厚手の布でできており折り曲げて使っていたので3枚重なっていました。触っても熱くなく安全な温度と思われても長時間触れていると低温熱傷を起こすことがあるので気をつけましょう。 pic.twitter.com/IQ8GAUuX3K
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) December 8, 2021
水槽にはケージのような高さはないことが多いですが、もしも高さのある水槽を使う場合は、保温カバーの上に鳥が乗れるだけの空間を設けてはいけません。
低温やけどは治りが悪いだけでなく、足指が壊死することもありますので注意が必要です。
アクリルケースは熱と紫外線に弱い点に注意して利用する
アクリルは意外と耐熱性がない素材なので(60~65℃で変形してくる) プラケースと同様にケースとヒーターを離して設置することが鉄則です。
また、アクリルケースメーカーやアクリルの厚さによって取説の内容は異なりますが、一般的にはアクリルケースには100ワット電球の利用を推奨していないメーカーが多いです。
- 値段が高い
- 耐久性がある。割れてもガラス水槽のように粉々に砕け散ることはない
- 熱に弱い。歪みや変形が生じることがある
- 紫外線に弱い…直射日光や紫外線ライトの使用はNG
- アルコールに弱く、曇りが出る
- 経年劣化で黄変や細かいクラック(ひび割れ)が出てくる
- 手入れや使い方を誤らなければ寿命が長い

成鳥の保温としてアクリルケージケース を利用してケージを丸ごと覆う家庭は多いですが、アクリルは紫外線に弱い欠点があります。
紫外線により変質や黄変が出やすいので、アクリルケースの置き場所には注意が必要です。
ちなみにアクリルは紫外線を通しませんので、アクリルケースに入れっぱなしでインコに日光浴させても、日光浴の効果はありません(紫外線のせいでアクリルが劣化するだけ。百害あって一利なし)
プラケース・ガラス水槽・アクリルケースのいいとこどりをした使い分けがおすすめ
保温電球やヒーターを誤った方法で使用すると、住宅火災やインコの死亡事故につながります。
雛や病鳥・老鳥にどうしても高い温度の保温をする必要がある時は、ガラス水槽でヒーターの位置や管理をしっかりしながら見守ることが必要です。
保温電球を飼育ケース外部に設置した場合、容器内を十分に保温するのは難しいことがありますので、エアコンを併用してインコがいる部屋全体を暖める工夫が必要なこともあります。
もちろんその際には温湿度計で内部の環境をしっかりと把握するようにしてください。

ガラス水槽は耐久性に優れていますので5~10年は透明度も落ちず、衝撃を加えることがなければ長く使うことができますが、持ち運びができないことが難点です。
ですから通院時にはプラケース、自宅での絶対保温時にはガラス水槽または「完全な耐熱対策をした」アクリルケース…というように、両者のいいところを組み合わせてうまく使うことをおすすめします。
ガラス水槽はオカメインコサイズの鳥なら 最低でもW60×D30以上は欲しいところです。
