墓じまいしないとどうなる?おひとりさまの改葬トラブル体験談
60代女性の寄稿 私は未婚のおひとりさまで、兄弟がいない一人っ子です。両親共に他界し、跡を継ぐ人もいません。両親共に実家を離れた身なので、本家の墓を継ぐ選択肢はありませんでした。
しかしまだ両親とも存命の1970年代に、母方の親族から
…との話があったのです。
つまり墓地自体を丸ごと譲るので、その代わり今後はあなたたちが一緒に管理と供養してほしい…とのことでした。
1970年代、墓地はけっこう払底していたようでした。自分たちの墓の用意を両親共に考えていましたから、この話は渡りに船。ありがたく受けたのです。
その霊園は自治体のものなので管理費があまりかからず 立地条件もよく、両親はとても喜んでいたと記憶しています。
特にその頃すでに癌で闘病した父は、最期に自分が入る場所を決めておきたかったようで、立派な墓石で自分の墓を建立していました。
場所を提供した母の大叔母の墓も並立しており、いっしょに供養していたのです。父が亡くなってから40年後に母もそこに入って、共に眠りについていました。
加齢とともに体力が年々きつくなるお墓の管理問題
そこに残されたのは私ひとりですから、その後の墓参りも管理もすべてひとりでやってきましたが、年々それがきつくなってきました。
私は年齢にしては活動的な方ではあったのですが、墓所が駅からいささか離れた場所にあることがまずネックでした。到着までにかなり体力を削がれるのです。
自治体の墓地なので管理側の掃除は側道くらいしかされていませんでした。それで特に秋のお彼岸は個人で掃除するだけでも大変でした。
掃除だけでなく、そもそもそこまで掃除道具を持っていくのも体力的にきつくなってきたのです。
跡継ぎのないおひとりさまが墓守りなら墓じまいすべき!?
そしてある日ふと考えました。
私の跡には誰もいない。かろうじて母の親族の叔父や叔母とはそれなりに付き合いがるが、皆がかなりの高齢。従兄弟もいるが、年々付き合いも少なくなっていく一方。そうなると…
霊園担当の石屋さんから、こんな話を聞いていたのです。
…と思い立ち、墓じまいを真剣に考え始めたのでした。
墓守り不在…永代供養墓に改葬するなら今でしょ!
実は墓じまいは この話を聞くずっと以前から少し考えていたのです。
そう考えてもすぐにそれを行動に移さなかったのは、私たちの霊園に永代供養墓がなかったから。しかし以前に霊園事務所で話を聞いてみたところ、
…との話を小耳にはさみました。
墓じまいから墓の移動までを念頭において、再度 管理事務所で永代供養墓について尋ねてみると
そう思った私は、すぐに事務上の手続きを開始しました。
霊園担当の石屋さんも参加して墓じまいの見積もり一式を出してくれたのですが、ここで第一の難関…墓じまいの費用問題を抱えることになりました。
墓じまい費用は80万円!魂抜きもきちんとやることにした
移動先の永代供養墓では「一切費用がかからない」ありがたさがありましたが、墓じまいするまでには相応の費用がかかります。
墓石を撤去して 収められていた骨壷を取り出して 更地に戻す…墓を仕舞う費用です。さらに石屋さんからは言われたのは
魂抜きは必須ではなく任意なのですが、これには私も「もっともなことだ!」と思い、魂抜きの僧侶を呼んでもらう手配もしました。
ここまでの費用は見積もりによると80万円となりましたが、実際の後日請求も見積もりのとおりでした。
墓石の撤去費用は1㎡あたりおおむね10万円ですが(2023年)墓じまいにかかる費用は場所や立地条件により異なります。撤去する重機が入るのが困難な山の中などでは、人件費がかさむので高く見積もられます。
墓じまいで檀家をやめる場合には離檀料もかかります。離檀料はいつものお布施の3~5倍程度が相場ですから、かなりかかることを覚悟しなければいけないでしょう。
墓じまいの相談の合間を縫って、私は役所に行きました。移転やその霊園の使用をやめる旨の書類など、多々提出する書類があったからです。
こういう手間は行政の霊園だったので、仕方ないですね。それにしてもこの石屋さんがとてもいい人で、私のこうした役所巡りにも延々と付き合ってくれたのです。
最後の最後で予期せぬ墓じまいトラブルが浮上して…
ようやく準備も整い、墓じまいして、身内の骨壷を永代供養墓に移動させる日がやってきました。僧侶のお経をBGMに墓石が撤去されて、そこに収められていた骨壷が取り出されました。しかしここで関係者一同
霊園の関係書類によると、納骨されていたのは大叔母の家族一同と、私の両親の骨壷だけのはずでした。しかし数えてみると…1つ骨壷が多かったのです。
とっさにそう思いついた私はその場でその旨を話したのですが…現実問題として骨壺の数が書類と異なることをどうしたらいいのか。なぜそれが書類に記載されていなかったのかすらわかりません。
その場には霊園の管理人と石屋さんが立ち会っていました。私を含めて3人で「これはどうしたものか…」と顔を見合わせてしまいました。霊園管理人は行政側の人なので融通なんて利かないのではないか!?
お役所仕事だから…これでまた…あれやこれやと面倒な書類手続きのやり直しか…
そう考えた途端にげんなりましたが、霊園管理人はそこで機転を利かせてくれたのです。
そう言って、書類をそのまま通してくれたのです。
これが本当はいけないことなのかどうなのかは分かりませんが…この機転のおかげで予定通りに遺骨の永代供養墓への移動がそのまま完了したのです。霊園管理人にも石屋さんにも、今でも本当に感謝でいっぱいです。
その後も親族が一人減り、二人減り…私も年々体力の衰えを感じるようになりましたが、あの時お金をかけて墓じまいをしたこと、そして後顧の憂いがなくなったことが本当に良かったと思っています。