一身専属権!デジタル遺品には相続できないものがある
この記事でいうところの「デジタル遺品」は 主に「オフラインのデジタルデータ」と「オンラインのインターネットサービスのアカウント等」を指します。
そもそもデジタル遺品とは?
2023年現在「デジタル遺品」は法律上の用語ではありません。「デジタル遺品」の呼び名からして「故人の遺品のデジタルデータにまつわるもの」なのはわかりますが、明確な法的定義はないのです。
パソコンやスマホなどのデジタル機器そのものも「デジタル遺品」と呼ばれていますが、これらは実体のある「物」なので「遺品」としての取り扱いは難しくはありません。
しかし難しいのはその中身であるデジタルデータやネットのアカウントなど実体がないもの。
これらもすべてひっくるめてデジタル遺品と呼びますが、明確な法的定義がないだけに その取り扱いが難しいものとなっています。
デジタル「遺品」なのに相続できないものがある!?
「デジタル遺品」…それがオンラインなのかオフラインなのかによっても取り扱いが異なります。
オフラインなら故人が遺したデジタルデータはきちんと手順を踏みさえすれば「自分だけのもの」として処理することが可能です。
しかしオンラインとなると第三者をまき込み、サービス契約をしていることがほとんどなので お金が絡んでいたり、取扱いがデリケートだったり 複雑だったりして、後でビミョーな展開になることがあるので要注意です。
- デジタル機器に保存されたデジタルデータ。ネットなしでも機能するもの。
- 文書ファイル
- 画像データ
- インストールしたアプリ
- 閲覧履歴
- PCやスマホに保存されているデータは所有権が認められない=相続できない。
- インターネット接続を前提とし、契約をはさんでいるもの。相続人とサービス提供者間で処理をする。
- インターネットサービスのアカウント
- ネットバンク・ネット証券口座のアカウント
- SNSアカウント
- クラウドサービス
- 一身専属性であれば相続の対象外となる。
オフラインのデジタル遺品には所有権の対象外(相続できない)
デジタルデータは「実体」がありません。実体がないものは民法上では所有権の対象にならないとされています。
原則として 所有権を認められないものは相続ができません。ただし…
デジタル機器の所有権の相続から 機器内に保存されているデータを相続人が引き継ぐことができます。そこで相続人はデジタル機器内のデータを処分することは自由と考えられています。
故人のオフラインのデジタル遺品をどうしても欲しい場合は、相続人の遺産分割協議で、そのデジタルデータが保存されているデジタル機器を相続するのがいちばん簡単なやり方です。
もしもほかの相続人がそのデジタル機器を相続する場合は「データの共有を条件に相続を認める」などの条件をつけさえすれば お目当てのデータを手に入れることができます。
ちなみに、ちょっとややこしいのですが、オフラインのデジタル遺品の所有権は認められなくても、デジタル遺品の知的財産権(著作権など)は相続の対象です。※著作物に該当するオフラインのデジタル遺品限定。
オンラインのデジタル遺品には相続できないもの(一身専属権)がある
オンラインのデジタル遺品の場合は、それに一身専属権があるかどうかによって相続の可否が分かれます。
オンラインのデジタル遺品の中には「個人の一身に専属したもの」(一身専属)が結構あります。
一身専属とはわかりやすく言えば「契約した人にしか使えない」という意味です。
一身専属であるかどうかを確かめるには、インターネットサービスの利用規約を確認します。
「会員の死亡時の手続き」について「利用者の死亡によりサービスが停止します」…の記述。
これら があれば、一身専属性があると考えられます。逆に一身専属性がないなら相続の対象になります。
よくわからなくて心配な方はそれぞれのサービス提供者に問い合わせてください。
どうしても故人から引き継ぎたいデジタルデータ(ブログやアフィリエイトサイトなど)は、相続が発生する前に運営会社に相談して対処法を確認しておかないと痛い目に遭うので、しっかりとチェックしておくことをおすすめします。
このようにデジタル遺品の取扱には注意が必要です。
生前整理も兼ねて、自分や家族が利用しているインターネットサービスの利用規約などを確認しておく必要があります。