トリカブト保険金殺人事件

神谷力 トリカブト保険金殺人事件

1986年(昭和61年)5月20日に「トリカブト保険金殺人事件」は起こった。

沖縄旅行中の神谷力(当時47歳)と妻の利佐子さんは、妻の友人3人を那覇空港に出迎えた。

神谷力の3度目の妻となった利佐子さんは、半年前まで池袋のクラブで働いていて、友人たちはホステス時代の仲間だった。

3人を沖縄旅行に誘ったのは神谷夫妻である。

一同が顔をそろえたあとに、神谷力は急用を思い出したといって空港に残り、女性人は予定通り石垣島行きの飛行機に乗り込んだ。

石垣島に着いた正午過ぎ、利佐子さんは悪寒と多量の発刊、手足の麻痺で苦しみ始め、午後3時4分に死亡した。

死因は心筋梗塞だった。
 
 
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1991年(平成3年)6月9日 神谷力は別の横領容疑で警察に逮捕された。

その取調べの中で、5年前の妻・利佐子さん怪死事件が浮上してきた。

利佐子さんは神谷力容疑者を受取人として、1億8500万円の生命保険に入っていた。

死亡後に神谷力が保険金を請求したが、死因に不審を抱いた保険会社は支払いを保留、これに対し神谷力は一旦 訴訟を起こしたが、取り下げていた経緯があった。

5年前に起きたこの保険金殺人には確証があまりないと思われていたのだが、利佐子さんの検死医の処置が適切だったのが幸いし、毒殺を証明することができた。

利佐子さんの血液からトリカブトの毒の検出に成功したのだ。

利佐子さんを検死したのは 当時 琉球大学に在籍していた大野曜吉助教授である。

大野医師は剖検時には利佐子さんの死因を急性心筋梗塞と判定したが、どこか納得できないものを感じ、利佐子さんの心臓や血液を保存しておいた。

大野医師は東北大学の協力を得て、血液からトリカブト毒(アコニチン)を検出し、さらに精密な検査の結果、フグ毒(テトロドトキシン)も検出されたため、利佐子さんの毒殺は確実とされた。

その後の調べで神谷力がトリカブト62鉢、クサフグ1200匹を購入していることが判明した。

捜査陣は神谷力容疑者が保険金目当てに妻に毒物を飲ませたものとみて、1991年7月1日、殺人と詐欺未遂の容疑で再逮捕した。
 
 
トリカブト保険金殺人事件の公判の争点は、状況証拠は多いが、直接証拠がなかったことだ。

検察側は利佐子さんの血液からトリカブトとフグの毒が検出されたことや、神谷力容疑者がトリカブトとフグを大量に購入して毒を抽出していたこと、実験器具を所持していたことを挙げた。

さらに利佐子さんが生前、サプリメントのカプセルを飲んでいたことを挙げ、神谷力被告が沖縄で毒入りカプセルを利佐子さんに渡し、それを飲んで妻は死んだと主張した。

神谷力は トリカブトを買ったのは観賞目的であり、フグは食品会社を始めるための研究用だったと反論。

さらに神谷力は自分のアリバイも主張した。

神谷力
利佐子さんは自分と別れてから3時間後に死亡している。
 
トリカブトの毒は即効性だ。
 
死亡時、自分には遠隔地にいたというアリバイがある。
 
警察はカプセルを二重にすることで効力を遅らせたというが、その方法でも3時間も遅らせることはできない。

実は、いつ神谷力が利佐子さんにカプセルを与え、いつそれを妻が飲んだのかは目撃者もおらず、わかっていない。

この点が検察側の弱点だったのだが、検死した大野医師は法廷でこう証言した。

大野医師
トリカブトとフグの毒を微妙に混合すれば、お互いに抑制しあって効力を遅らせることができる。
 
 
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検察側は神谷力の犯行動機を、消費者金融の借金などで追い詰められ、保険金を取るために利佐子さんとの結婚を急いだと主張した。

神谷力は2番目の妻の死からひと月あまりで利佐子さんの関係を持ち、4ヵ月後には結婚していた。

多額の保険加入は利佐子さんが死亡するわずか20日前で、月々18万円の掛金はそのとき1度しか支払われていない。

さらに検察側は、神谷力が1981年頃からトリカブトとフグの毒の抽出・精製に取り掛かっていたことや、1985年に亡くなった前妻にも毒を飲ませて人体実験をしていた可能性があると述べた。

利佐子さんの死亡後も毒を隠し持っていたことから、次の殺人を計画していたと思われる、とも。

毒物による犯罪は遠隔操作の一種なので、証明するのがとても難しい側面がある。

このトリカブト保険金殺人も状況証拠はたくさんあるが、犯行に結びつく直接証拠はなく、発覚するまで年月が経ちすぎていることもあって、神谷力は堂々と否認を続けていた。

そんな中、1994年9月、東京地裁は求刑通り、神谷力に無期懲役の判決を言い渡した。

被告側は控訴したが、二審でも一審判決を支持し、無期懲役が下されている。

神谷力は最高裁に上告したが、2000年2月21日、最高裁は神谷の上告を棄却。

神谷力の無期懲役が確定した。
 
 
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