八王子スーパーナンペイ事件(大和田町スーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件)で疑われた人々

八王子スーパーナンペイ事件via:時事通信

※この記事は筆者が書籍を読んだり調べた中で印象が強かった部分をまとめたもので、全ての情報が正しいとは限りませんことをあらかじめお断りしておきます。ナンペイ事件に関する正確で詳細な情報は警視庁HPを参照してください。
 
 
八王子スーパーナンペイ事件の犯行時間は、被害者・稲垣則子さん(当時47歳)が事務所からかけた一本の電話と、その電話を受けて稲垣さんをナンペイまで迎えに来て第一発見者となったAさんの行動が根拠となって割り出されている。

稲垣則子さんが電話をかけた午後9時15分というのは通話記録に残っているため間違いない。

元公務員のAさんは稲垣則子さんの飲み友達で、事件当日の午後9時15分の「迎えに来て」という連絡を受けて、ナンペイに車で向かっていた。

稲垣則子さんがAさんに迎えを頼むことは、行きつけの飲食店の従業員の証言によると 珍しいことではなかったらしい。

スナック常連だった頃にAさんは稲垣則子さんに入れ込み、お金を相当貢いだことから一時期はだいぶもめて険悪な時期もあったようだが、それでも事件当時は稲垣さんにとってAさんは気軽に飲みに誘ったり、送り迎えを頼むことができる間柄だったという。

 
午後9時20分すぎにAさんはスーパーナンペイの駐車場に車を止めて、稲垣さんが来るのをしばらく待っていたが、稲垣さんはなかなか下りてこない。

稲垣さんは一人で店へ向かったのかも…と思ったAさんは、一旦訪れる予定だった店に行ってみたが、そこに稲垣さんはいなかった。

「おかしいな」と思ったAさんは 営業中の店からママを連れ出して、二人でナンペイまで引き返すことにした。

そして階段を上がり スーパーナンペイの事務所の扉を開けた二人は、そこで凄惨な現場に遭遇する。

慌てた二人は近くの公衆電話から110番通報をせず、少しはなれた北八王子の交番に駆け込んだ。

そして初動捜査では定石どおりに 第一発見者であるAさんが、真っ先に疑われた。

なぜ一人でナンペイに向かわなかったのか?(営業中のママを連れ出す必要はあったか?)

近くの電話から110番通報する発想が二人にはなかったのか?

わざわざ距離が離れた交番に駆け込んだのはおかしくないか?・・・など、突っ込みどころはいくつかあったが、Aさんが捜査線上に長くとどまることはなかった。
 
 
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スーパーナンペイ事件via:事件現場(大島てる:八王子市大和田町)
 

もう一人事件直後に捜査員たちが疑いの目を向けていたのは、スーポーナンペイの専務の故・穐山博氏だった。

穐山氏は事件発生直後に現場を目撃した一人だった。

穐山博専務
あれは事件が起きた日の夜の9時40分くらいだったかな。家に電話があって、娘が出たんだ。
 
それで「警察でお宅のスーパーで3人殺されたって言ってる」っていうから「ふざけんじゃねえ。電話切っちまえ!」って言ったんだ。
 
そしたらまたすぐにかかってきた。
 
だから「何課なのか訊け」って言ったら「捜査一課だ」っていう。びっくりして駆けつけたよ。

事務所につくと狭いとこに30~40人の警官がいる。
 
部屋の中に進もうとしたとき、いきなり目に飛び込んできたのが殺された稲垣則子さんだった。
 
入り口の正面に金庫が見えて、その金庫と冷蔵庫の間にまるで誰かがもたれかけさせたように死んでいた。
 
俺はそれとまともに目が合ったのだから肝を冷やしたよ。

穐山氏はスーパーをチェーン展開していた「ナンペイ」の社長の実弟でナンペイの専務であり、事件現場となった大和田店を任されていた。

当初、捜査一課の幹部は穐山氏を疑っていた。

穐山氏が店の金を使い込んで穴を開けたのを隠すために、強盗に入られたように偽装しようとしたのではないかと。

店の責任者が横領を隠蔽するために犯罪者を雇い、ひと芝居討ったのではないかと疑っていたのだ。

というのも穐山氏は「今度ここでヤクザがスーパーを出店するらしい」と地元で噂になったくらいの風貌の持ち主だったこともある。

見た目でそういう判断をするとはなんとも失礼極まりない話だけれど^^; 捜査本部が考えたシナリオも確かにありうる話ではある。

穐山氏はその種の風貌だけでなく、遊び方も破天荒だったことが、警察から疑われる一因だった。

穐山氏は仕入れに行くときもベンツを乗り回し、夜の八王子で派手に遊びまわっていることも 地元では有名な話だった。

周囲には金回りのよいところを見せていたから 事件との関連を疑われるのも一理あったのだ。

事件後まもなく穐山氏宅を訪れた捜査員たちは、子供用から女性ものまで全ての靴から靴型を取って帰ったという。

犯人が残した25.5センチの靴型に合う靴を探していたのだろう。

穐山博専務
その作業の日が暑かったから、捜査員たちにカキ氷を出したんだよ。
 
そのカキ氷を運んでいった捜査員が女房に「奥さん、専務がいいかげん吐いてくれりゃ、俺たちも楽なんだけどなあ」って言ったって言うんだ。
 
だから俺は「ふざけんじゃねえよ」と怒鳴ってやったんだ。
 
それから店に行ったらまた警察から電話がかかってきて「おい専務、いいかげんに吐け、この野郎!」って言いやがるから こっちも「てめえ、この野郎!」ってことになった。
 
女房に「おい、今、うちには金がどのくらいある?有り金はたいて弁護士を雇って訴えるぞ!」って。
 
まあ結局、最後には謝りに来たけどね。
 
 
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これまでこの事件に絡んで疑われた人は数知れない。

ナンペイの事務所を訪れていたり立ち入ったりしたあらゆる人々が調べられたからだ。

商品納入業者、セールスマン、機会のメンテナンスメーカーの社員、ゴミ回収者、浄化槽の清掃業者、パートの面接を受けに来た就職希望者まで、疑うまではいかなくても、あらゆる可能性を考えた警察によって全てチェックを入れられている。

事件現場の凄惨さから裏街道を行く人たち、暴力団関係者やジャンキーは特に捜査員たちのアンテナに強く触れた。

そんな中で当然のように浮上したのが、中国人犯人説だった。

中国人犯人説は早い段階から浮上しただけでないし、今も完全に消えたわけではない。

事件当時、穐山氏と親しかった八王子のクラブの中国人ホステスが事件後に姿を消したことがあったので、捜査員は事件との関係を強く疑っていたのだ。

穐山氏はそのホステスを事務所の中に入れ、そこに待たせておいて一緒に同伴していた。

だから中国人ホステスは、そこに金庫が置いてあることも見知っていた。

彼女が実行犯でなかったとしても、情報提供者として強盗団にそれを話したという可能性は否定できない。

クラブで羽振りがよい客がいるという情報が犯罪集団に流れていき、その客の会社がターゲットにされる可能性が高いことも事実。

また「どこにどんな金持ちがいてどんな暮らしをしている」という情報が 裏社会で売買されている現実もある。

ただ、ナンペイ事件の場合は中国人犯罪の特徴が色濃くないという。

たとえば中国人犯罪は組織的であればあるほど留守になる時間帯を見極めて、トラブルを避ける傾向が強いという。

金だけが目的であるなら暴力的なことを避けることが多いので、その点がナンペイ事件の状況には当てはまらない。

またナンペイ事件の犯人は拳銃は持っていたが、バールは持っていなかったようだ。

バールで金庫をこじ開けようとした形跡がない。

ナンペイの事務所の机の引き出しには貴金属やアクセサリーが置かれていたにもかかわらず、それらも手つかずである。

穐山博専務
事務所の机の中にはいつも高価なブレスレットやネックレスが入れてあった。それはクラブに飲みに行く時に身につけていくものだったんだ。
 
クラブに通うためのアクセサリーだからどれも高級品だったし、時計もあった。ロレックスのダイヤモンドが入ったのとか。
 
そういうのが全部置いてあったのに、なぜか犯人は一切手をつけていなかった。
 
警察は机の指紋も全部採っていったけど、何も出なかった。

2003年の秋には現金輸送車襲撃事件で無期懲役を受けた中村泰(なかむらひろし)服役囚の関与が一時取りざたされたが、この線も有力な証拠やアリバイがないことから次第にトーンダウンしていった。
 
 

八王子スーパーナンペイ殺人事件は今!?未解決事件の詳細と考察

この拳銃強盗犯がスーパーナンペイ事件にも関与しているのではないかと捜査当局が色めき立ったのは、ナンペイ事件で使われた銃弾の線条痕が、中村が関わった大阪厚生信用金庫強盗事件で使った拳銃のそれと酷似していたからだった。

中村は東大理Ⅱ類に進んだ秀才でありながら「国家権力と闘う」反社会性を持った拳銃マニアで、過去にも職務質問した警察官を射殺した前科を持ち、出所後の26年間素性がわからない空白の時間を過ごした謎の人物である。

とはいえ最終的には、一時期はナンペイ事件の犯人ではないかと疑われた中村が事件への関与を全否定したことや、線条痕が「酷似」しているだけで一致したわけではないこと、彼にアリバイがあったことなどから、中村泰はナンペイ事件の犯人ではないという結論に至ったのだった。

そもそも中村泰にとっての反社会性はある種の国家権力に向けられたものであって、無抵抗な女性を簡単に殺してしまう残酷さとは全く違うもの。

その点から見ても、中村泰はナンペイ事件の犯人像とは重ならないのである。

 
 
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2001年前後、2つの離れた刑務所にいた暴力団員の兄貴と舎弟の間で、ナンペイ事件の犯人についての詳細な記述を含む手紙のやり取りがされたという情報がマスコミにもれてきた。

手紙はまもなく警察に押収されたため、その中身は、手紙の受取人である兄貴分から話を聞いた、というその周辺の証言、残されたメモから組み立てるほかなかったが、

その中で最も驚くべきことは、それまでは単純な被害者としてしか認識されていなかった稲垣則子さんが「実は犯人たちと内通し事務所に導き入れた人物」だと説明されていたことだった。

彼女が頭部に銃弾2発を撃ち込まれて死んだのは「現場でトラブったからだ」という。

あまりにも突飛な「仮説」だった。

被害者に対する憐れみのなさに強い抵抗を覚えたが、一報で単なる強盗による犯行と考える従来の説よりも、どこかしっくりくるように思えたことも確かだった。

考えてみれば、稲垣さんが被害者の中で一人、毛色の違う存在であったことは殺害状況からも明らかだ。

3人の中で一人だけ縛られず、銃弾も2発も浴びせられている。

via:真犯人に告ぐ

稲垣則子さん内通説を手紙に書いた本人Bが出所してから、Bがジャーナリスト・富坂聰氏に語った話はかなり衝撃的なものだったという。

「あれは強盗殺人に見せかけた殺人だった」

B
3人の中に一人だけいたおばちゃん(稲垣則子さん)は、実は長年 愛人関係にあった男から別れ話を切り出されていた。

それで逆にその男を脅していたんだ。

だから男は人に依頼しておばちゃんを襲わせたんだ。強盗に見せかけてね。

依頼されたやつらがあんな乱暴な仕事をしたのは、あの日しかチャンスがなかったからだ。

おばちゃんは仕事も休みがちで気まぐれだったし、もうスーパーの仕事も辞めようとしていた。

だからあの日を逃したら、もう二度と出勤して来ないかもしれない。

強盗に見せかけるなら、自宅じゃ意味がなかったからね。

(中略)

押し入ったときに高校生を殺すつもりなどなかったんだ。だから彼女たちを縛り上げたんだ。

その上で金庫を開けさせて金を取って殺せば全てが終わったんだ。

だがあのおばちゃんは気が強いから奴らに食って掛かり、逆に突き飛ばされた。

その小競り合いの最中におばちゃんは言ってはいけない人の名前を出したんだ。

「あんたたち、××に頼まれたんでしょう!」って。

奴らはもともと目だし帽で顔を隠していたし、高校生とは接点がない。

殺す意味なんてなかったんだ。

でも、その名前を聞いちゃったらそうはいかない。

via:真犯人に告ぐ

富坂氏が手紙の筆者Bと話していた中で、なぜこの男はこんなことまで知っていたんだ?と思うことがあったそうだ。

B
あのおばちゃん(稲垣則子さん)が暮らしていた駅前の7階のマンションで…
B
あの日のナンペイの金庫に入っていたのは800万円

それまでの報道では、金庫の中身は400万円とされていたのだが、実は800万円入っていて、そのことは専務の穐山氏も驚いていたという。

穐山博専務
金庫には交通事故の示談金300万円がずっと入っていた。それは俺しか知らないことで、警察にも話してない。
 
新聞紙にくるんでいて、事件の直後に捜査員の前で「これは俺のだから」と取った。
 
でも確かにあの日の売り上げ、400~500万円のほかに300万円を置いていた。
 
富坂氏にBは、稲垣則子さん殺害を依頼したという人物の名前や職業を具体的に教えている。

その名指しされた男は実在していたので、富阪氏はその男に取材を申し込んだ。

名指しされた男
僕が警察から犯人扱いされていたのは、ずいぶん前のことです。

稲垣さんの愛人といったって、事件の前にはもう切れていたわけです。

稲垣さんが金に困っていたなんてことはないんじゃないかな。

僕が定期的に銀行に振り込んでやっていたから。
 
まあ疑ってもかまいませんけど、僕は犯人じゃない。

 
 
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稲垣則子さんは事件後の報道では「福島県から中学卒業と同時に集団就職で東京に来て、スーパーでレジ打ちをしながら介護士を目指し試験勉強に励んでいた」女性とされていた。

ところが稲垣さんは「ナンペイ」で働き始める少し前まで、八王子のネオン街で有名なホステスをしていた。

昔の稲垣則子さんの華やかな暮らしを知る人々は彼女が事件にあったことに驚くと同時に、彼女があの寂れたスーパーで働いていたことに驚いたという。

稲垣則子さんは30歳前後で水商売に身を投じて、八王子の超高級クラブのナンバー2に上り詰めたあと、自分の店、スナック「わかお」を八王子の繁華街にオープンさせたのだ。

ただ「わかお」の経営は思わしくなかったようだ。

「わかお」の近所の小料理屋店主
店の中で何か揉め事があって、パトカーが来たことも一度や二度ではありません。救急車のときもありましたし。
 
それでも「わかお」の場合は、ああまたか、といった感じでしたね。
 
お客さんと喧嘩して全身打撲になったと本人から聞いたことがありますが、トラブルの原因は教えてくれませんでした。
 
ただ噂では、客を紹介したら、その客が高い金額を吹っかけられたことが原因のようです。
 
彼女目当てに通っていた男性が「家まで処分して貢いだのに…」って暴れたこともあったようですが…。
 
via:真犯人に告ぐ

そんな稲垣さんは、職を求めてナンペイに面接に行ったとき1回目では落とされている。

半年後に2回目に面接に行って やっとナンペイのパートに採用されている。

店の責任者である穐山氏は、稲垣さんの居住地区にはパート募集チラシが配られていないのに なぜウチに来たの?と稲垣さんに訊ねたことがあるという。

穐山博専務
稲垣さんはおじさんがこっちにいるからって言ってた。それ、愛人のことだろうけど。
 
当時、時給1000円といえば高いほうだから、それが理由だって説明してた

しかし稲垣さんが仕事を初めてから間もなく、レジの計算があわない問題が持ち上がったらしい。

店に入った初日にいきなり売り上げが1万円足りない。

でも金額入力がバーコードなのだから 打ち違えたなんてことはありえない。

1万円と5千円を間違えて5千マイナスになったというケースなら考えられるが 1万円丸ごとマイナスなんて不自然。

その翌日は8000円合わなかったという。

そんな稲垣さんを穐山氏は夜間金庫の当番に抜擢したため、二人の間に男女関係を疑う声が上がった。

穐山氏が彼女を金庫の責任者にしたのは他にいなかったからだと言って、男女関係についてはきっぱり否定している。

確かに午後5時で正社員が引き上げて、後に残るのはパートとアルバイトだけのスーパーだったから、閉店まで店にいる年長者だったかもしれない稲垣さんを責任者にしたのもわからないでもない。

そのほかにも疑わしい気持ちになる謎がいくつか残る。

稲垣さんは常連だった飲み屋で「ナンペイの金庫は危ない」としょっちゅう話していた。

売上金の大金を金庫に入れてるのに、店の責任者は毎晩飲み歩き、夜になるとバイトの女・子供だけになる、と口外していた。

さらに稲垣さんが事件の直前に「もうすぐ保険金で5000万円下りる」という話を行きつけのスナックで漏らしていたという話もあるが、そんな事実はなかった。

また、店の防犯システムの記録に、一度施錠されたあとに再び開錠されたあとがあったこと。

9時15分に稲垣さんが鍵をかけたのに、そのすぐ直後に鍵を開けた形跡があることは、そこで犯人と出くわして 無理やり事務所に押し入られたことを示しているのかどうか!?

もしそうなら、稲垣さんが内通しているかもしれなかったという可能性は低くならないのか!?

それともこれを襲撃のタイミングがよすぎると見るのが正しいのか!?

あまりにも不可解なことばかりで、考え始めると、あらゆる可能性が頭をよぎってしまう。

これらの複数の要素がスーパーナンペイ事件にかかわりを持っているのかどうかもはっきりとはわからない。

でも、被害者や周囲の関係者に奇妙で不自然な点が多いことが ナンペイ事件をさらに複雑にしている要素であることだけは確か。

いずれにしても、スーパーナンペイ事件が解決する日が一日も早く来ることを願うばかりである。
 

※この記事は筆者が書籍を読んだり調べた中で印象が強かった部分をまとめたもので、全ての情報が正しいとは限りませんことをお断りしておきます。ナンペイ事件に関する正確で詳細な情報は警視庁HPを参照してください。
 
 
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スーパーナンペイ事件 容疑者