大久保清連続殺人事件!殺人鬼を完落ちさせた詩集と刑事の執念

大久保清事件 詩集 頌歌

大久保清という稀代の殺人鬼

1971年3月からの2か月間で、群馬県で16~21歳の女性が次々と姿を消した。

そして5月、またもOLが失踪したが この時、行方不明の彼女の自転車についていた指紋を消そうとしていた 装飾品セールスマンの男が逮捕された。

犯歴6回(うち4回が婦女暴行)で3/2に府中刑務所を仮釈放になったばかりの男だ。

取り調べが進む中で驚愕の事実が次々と発覚していった。

男はわずか41日間という短期間に127人の女性を誘い、うち8人を殺害した殺人鬼だったのだ。

この男こそが 2か月間で8人の女性を殺めた稀代の殺人鬼、大久保清である。
 
 
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大久保清が女性を誘い出す手口

そもそも127人もの女性を、大久保清(当時36歳)はどうやって誘ったのか?

大久保清
すいません
Aさん(飲食店店員)
はい?

当時の群馬県では珍しい最先端のファッションに身を包み、スポーツカーに乗り、ベレー帽にルパシカ(プルオーバータイプのシャツ)といういでたちでフランス帰りの画家を装うのが大久保清の手口だった。

大久保清
あ・・・人違いでした。

昔、あなたみたいな素敵な方に絵のモデルになってもらったことがあって

Aさん(飲食店店員)
素敵だなんて。あなた画家なんですか

大久保清は女性のタイプによって、巧みに嘘をでっち上げた。

大久保清
はい。もしよろしかったら、絵のモデルになっていただけませんか
Aさん(飲食店店員)
でも、やったことないし
大久保清
あなたならきっと、素晴らしいモデルになります
Aさん(飲食店店員)
じゃあ、お話くらいなら
大久保清
どうぞ。シルブプレ(…と言って女性を車に乗せる)

フランス語交じりの会話に、画家をアピールするベレー帽とスポーツカーが、大久保清のトレードマークだった。

ターゲットは学生やOLなどの若い女性ばかり。

大久保清
すいません。この辺に画廊とかありますか
Bさん(高校生)
さあ、分からないです。

(大久保の車内を見て)あっ、それって「ライ麦畑」サリンジャーの

大久保清は 女性を信用させる小道具として、車内に常に洋書や美術品を積んでいた。

大久保清
近くにアトリエがあるので、よかったらそこに行きませんか。

すぐ近くですよ。どうぞ(…と誘って女性を車に乗せる)

1970年代当時はお見合い結婚の割合が高く、お見合い結婚とと恋愛結婚の割合は6:4という時代。

誰もが恋愛に憧れを持っており、大久保清の柔らかな物腰と知的な会話は 女性たちを夢見心地にした。

実際に、誘われた女性の三人に一人は、大久保清の車に乗ったという。

落合刑事
被害に遭わなかった女性に話を聞くと「大久保清は優しい人だった」という女性が何人かいました。

しかし、大久保清は夜になると豹変し、人気のないところに女性を連れ出しては乱暴を繰り返し、これで自分たちは恋人だと悦に入った。

乱暴された女性が全員殺されたわけではなく、大久保清を凶行に走らせたのは、彼を否定する言葉を発した女性だった。

被害者
けだもの!アンタは最低の人間よ!
被害者
おじさん、ホントに画家なの?

それ(大久保が口ずさんだ自作の詩)だって、詩じゃなくて日記じゃない!

大久保清は相手に嘘がばれたり(名前や職業を偽っていた) 自分を否定される言葉を吐かれると 怒りに身を任せて女性を殺害した。

芸術家の仮面をかぶった連続殺人鬼の素顔は無職で妻子と別居中の前科6犯だが、大久保清は女性たちの前では画家や美術教師や数学教師などを装っていた。

生家は資産家で 親に甘えて買ってもらったスポーツカー(マツダ・ファミリアロータリークーペ)を乗り回し、ガールハントのために愛車で1日平均160キロメートル走行していた。

当時大久保清の嘘に騙されていたのは、女性だけではなく、警察までもが大久保清の嘘に翻弄され、証拠不十分で彼を釈放する直前というところまで追い込まれていた。
 
 
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警察まで翻弄した大久保清の嘘と落合貞夫刑事の日記

大久保清の完落ちまで取り調べをした捜査員の一人である落合貞夫さん(当時40歳)は、当時の大久保の様子を日記に綴っていた。

【5月17日の日記】大久保清の取り調べ、自供はウソ。

目撃証言から大久保清を逮捕した警察だったが、取り調べを始めると大久保は意外にもあっさり女性殺害を自供していた。

ところが・・・

落合刑事
殺害したことを自供はしたが 遺体の場所を言わなかった。

殺人事件は死体がなければ起訴できない。

大久保清の自供をもとに、県内外の5000か所、のべ3000人以上の捜査員を導入して被害者の捜索をしたが、とうとう遺体は出てこなかった。

この段階での大久保清の供述は全て嘘だったのだから、遺体が出てくるはずがない。

その後も大久保清は遺体の遺棄場所の供述を二転・三転させて、警察を振り回し続けた。

いくら殺害を自供しても、物的証拠となる遺体が出なければ 証拠不十分で釈放の可能性も出てくる。

大久保清はそれをすべて承知の上で、嘘の自供をしていたのだった。

落合刑事
遺体をどこに埋めたのか白状しろ
大久保清
死刑になったって構わない。だけど話さないよ!

【5月21日の日記】特異な供述なし。

【5月22日の日記】特異な自供なし。

落合刑事
刑事の中には「殴りたければ殴ってみろ!」と言われた人もいた。

でも、こちらが怒ったからといって自供するもんじゃないしね。

【5月24日の日記】黙秘。

大久保清が遺体の場所を自白する気配は一切なかった。

ところが一人の刑事の言葉が事態を一転させ、大久保清を完落ちに向かわせた。
 
 
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殺人鬼大久保清が詩の朗読に涙

大久保清逮捕から2週間が経とうとしていた1971年5月26日。

落合刑事はこの日、なぜか供述をとろうとせず、大久保清の前で詩を暗誦した。

落合刑事
私は山を愛する

あの山は私をまねいている

黄土色のアプリコットが 私のひだをうるおし

それらの香りが 私の脳裏にしみついた

いつかある日 山で死んだら 

古い友よ 伝えておくれ 

俺は男らしく死んだと

それを大久保は神妙に聞き入っていたという。

落合刑事
いい詩だな、大久保。

女はみんな、この詩に聞き惚れたんじゃないか

すると突然、大久保清が大声で泣き出した。

大久保清
俺の詩じゃねえかーっ(号泣)
落合刑事
お前にこんな才能があったとはなあ

落合さんはずっと探していたのだ、大久保清がいちばん認めてほしいものを。

そしてその答えは大久保清の詩集にあった。

大久保清 頌歌

大久保清は詩が大好きで、特にリルケの詩を愛し、彼がいちばん感銘を受けたのはリルケの「黄色なるバラの花の詩」だという。

好きが高じて大久保清28歳のとき、谷川伊凡のペンネームで詩集「頌歌(しょうか)」を自費出版している。

「頌歌」の内容は、獄死、囚人、殺意、白骨、墓場など、おぞましい犯罪者の心理が窺えるものが多かったが、落合刑事はその中の一編を暗誦していた。

落合刑事
今までの捜査からすれば 被疑者をおだてて自供させるのがいちばんだった。

刑事たちは大久保清の取り調べに対する戦術を変え、犯罪者の心境に近づくために若い女性をロマンチックな気分にしそうな詩を選び、リルケ、ホイットマン、ヘッセなどの詩を暗誦していた。

そして落合刑事は取り調べでそれを引合いに出し、大久保清の才能を認めて歩み寄り 自供を促すことに賭けた。

大久保清
この俺の気持ち、わかりますか?
落合刑事
ああ わかるよ

言葉で自分の存在を否定した女性たちを殺め続けた殺人鬼が、その存在を認めてくれた言葉に落ちた。

実際は大久保清がこのまますんなりとすべてを自白したわけではなかったけれど、こうやって一歩ずつ殺人鬼の心理に歩み寄りながらの取り調べは 我々が想像する以上に大変だったと思う。

大久保清は何もかも承知した上でなかなか陥落せず、大久保清連続殺人事件8件の全容解明は百日捜査となったのだった。

さらに大久保清を完落ちさせたのは落合貞夫さん一人の功績ではなく、捜査員全員のチームワークによるものであったことをここにお断りしておく。
 
 
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