大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その4

大久保清連続殺人事件 大久保清

大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その3のつづきです。
 

昭和46年5月31日 草加次郎からの手紙

捜査本部に茶封筒に入った横書き便箋1枚の書状が舞い込んだ。

宛名は「群馬県前橋特別捜査本部」 

差出人は「草加次郎」

消印は愛知県一宮局、5月29日 10-18時

内容は 捜査本部に対しては脅迫状、大久保清に対しては激励状である。

草加次郎から大久保清へ
大久保さんへ
事件に対しては何も言うな。
みんなわかると、刑事の家に火をつけて焼くぞ。
必ず守る。
俺も人の一人や二人、大久保さんをまねしておる。
がんばれよ。

決して言うなよ。
俺も大久保さんと一緒に刑務所にいたことがある。
俺は調べ官に必ず復讐するぞ。
決して何も言うなよ。

捜査本部にはこれまで手紙が30通以上届いていた。

「大久保清は女性の敵だ。徹底的に追及して」
「大久保清を死刑にしろ」などの激励の内容ばかり。

でも、大久保清への激励の手紙はこれが初めて。

ちなみに差出人の「草加次郎」は爆弾狂の草加次郎とは筆跡が違っていたようだ。

捜査本部としてはこれを悪質ないたずらと捉えていたが、徹底追及の構えは崩さず、指紋の採取や筆跡鑑定を行っていた。
 
 
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6月3日 3と雨のジンクス

大久保清は以前にこう洩らしたことがある。

大久保清
どうも3のつく日にはやることがうまくいかない
大久保清
雨の降る日は気が滅入る。殺した娘のことが思い出されてかなわねえ

そして今日は雨の6月3日。

取り調べ犯はこのジンクスを利用して、大久保を追い込もうと意気込んでいた。

捜査員
今日はお前の嫌いな3のつく日で、おまけに雨も降っている。

こういう日には何をやってもうまくいかないのは、お前自身がよく知っているだろう。

どうだ大久保、くだらんことで意地を張らずに、素直に吐いたほうがいいんじゃないか?

津川美恵子はお前が殺ったんだろう?

大久保清
俺は官憲と戦争をしてるんだ。

だから死体は俺の大事なタカラ(宝)で秘密兵器だ

捜査員
しかし、大事な秘密兵器をこっちが先に見つけたらどうなんだ?
大久保清
そりゃ、降参するしかねえな
捜査員
津川美恵子の死体はもう見つかってるんだ。

俺たちに秘密兵器をとられては、お前は降参するしかないよな。違うか?

大久保清
そうだな

こんな子供じみたやりとりが、大久保清の気を変えた。

大久保清
津川美恵子は俺が殺った。
捜査員
本当か?
大久保清
間違いねえよ。これが俺の最初の殺しだ

6月4日 津川美恵子殺しを全面自供

大久保清がようやく津川美恵子殺しを自供した。

大久保によると、3月31日午後6時30分頃、高崎線新町駅で津川美恵子が電車から降りてきたところで声をかけたという。

津川美恵子は18歳の女子高生で、3月25日に一度ドライブをしたことがあった。

新町駅前で車に乗せようとしたら「知っている人が見ている」というので 人が行き過ぎるのを待ってから車に乗せた。

津川美恵子に大久保清は「美大を卒業した画家で榛名湖畔にアトリエを持つ渡辺哉一・28歳」と自己紹介していたが、そんな大久保に美恵子は「免許証を見せろ」と詰め寄った。

大久保は仕方がないなとそれを見せた。

つまり嘘がばれる…名前も年齢も嘘。

大久保清が画家であることもアトリエを持っていることもでたらめだとわかると、津川美恵子は大久保に向かってこう言い放った。

津川美恵子
騙されたのも悪かったが、あんたはひどい人だ。

わたしの兄は検察官をやっている。一緒に警察に行ってくれ。

それを聞いた大久保清は逆上して津川美恵子の顔を殴った。

驚いた津川美恵子はパッと車から逃げ出したので 大久保は彼女を追いかけて行って捕まえた。

すると美恵子は大久保に謝ったという。

津川美恵子
兄が検察官というのは嘘です。ごめんなさい

「検事」という言葉はよく使うが、検察官というのは女子高生が嘘で使うはずがない!と思った大久保清は、彼女を生かしておくわけにはいかない決意して 津川美恵子を絞殺した。

そして車のトランクからスコップを取りだし、津川美恵子の死体を林道の南側に穴を掘って埋めた。

津川美恵子の死体は十分に穴を掘れずに埋めたので、そのあとで心配になり、2回ほどデートを装って様子を見に行き、土をかけ直した。
 
 
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6月5日 5日に1人の殺人

捜査員
大久保、他の娘のことも自供したらどうだ?

こんなことを言われれば普通は怒りだすところだが、大久保は薄ら笑いを浮かべてこう言った。

大久保清
それじゃゲロ(自供)してやるか。

本当のことを言うとな、俺は津川美恵子を殺した後、5日に一人の割合で殺しをやってるんだよ。

どうだ、驚いたか?

捜査員
別に驚きゃしないよ。お前ならやりかねないからな。

誰をいつ殺ったのか、言ってみろよ

大久保清
今は言えねえよ。津川をゲロしたばかりで、もったいない。

山が紅葉するまで教えるわけにはいかないな。

6月7日 加藤晴美殺害を自供

大久保清
今まで殺った中で思い出すと、いちばんあと味が悪いのは、津川美恵子が「嘘を言って悪かった」と謝っているのに殺しちまったことだ。

「警察に行ってくれ」と言われたから仕方なく殺したけど、今になって考えてみると、何も殺さなくてもよかったという気がするんだよな

捜査員
お前にも良心があるということだ。

冷血動物じゃない。お前は我々と同じ人間だよ

大久保清
その次にかわいそうだったのは加藤晴美という高校生だ。

捜査員は思わずお互いに目配せしあった。

「加藤晴美」は公開手配リストに載っている名前だったからだ。

それを大久保清は自分の方から口にしたのだ。

大久保清
加藤晴美に対して 俺は「中学で英語と美術の教師をしている。

時々会って話をする友達になってくれ」と言って誘ったんだ。

殺してしまったのは三度目に会った時だ。

二度目にあったとき、俺は靴下三足を買ってやったんだが、三度目のドライブ中に「一足が切れちゃった」と言うんで「今度会ったときにまた買ってやるよ」と言ったら、おとなしくて控えめな晴美は「でも悪いから」って遠慮したんだ。

いい娘だったな。そんないい娘を俺は殺したんだよ

捜査員
なぜ殺したんだ?
大久保清
俺がつまらない冗談を言ったからだ。

晴美が「でも悪いから」と言うから 俺は冗談に「デモなんかするとお巡りさんに捕まるぞ」と言ったんだよ。

すると晴美は「うちのお父さんはデモを取り締まるお巡りさんを指揮しているの」と言うじゃないか。

敵(官憲)の娘とわかった途端、急に憎らしくなって殺しちまったんだよ

捜査員
(数枚の写真を見せて)この中に加藤晴美はいるか?
大久保清
この娘だよ

大久保清が指差したのは、ズバリ加藤晴美本人の写真だった。

しかし加藤晴美の父親は警察関係者ではない・・・それを知った大久保清は逆上し、青筋を立ててわめき散らした。

そしてこの日は、また別の物的証拠が挙がった。

大久保清のロータリークーペから発見された頭髪や体毛の中から、行方不明リストに上がっている井川千鶴子と小橋孝子のものと一致するものが見つかったのだ。
 
 
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6月22日 大久保清の弱点

6月下旬に入っても大久保清にさしたる変化はない。

大久保は相変わらず反抗、怒り、自慢話、嘘の供述を繰り返すだけだった。

大久保清
あんた方はわかってないんだな。

何度も言ってるように、俺の反抗の大きな柱は肉親だ。

おやじもおふくろも俺を理解していない。

兄貴は殺したいほど憎い。

その次の柱は女だ。

かつての被害者たちに俺は嘘を教えられたんだ。

その次は女の嘘を一方的に取り上げた官憲だ。

だがわが子にだけは愛情があるし、夢にも見るよ

大久保清の弱点は詩と子どもだ…そう踏んだ捜査本部は、子供に対する思いや愛情が最高潮に達したときに、一気に全面自供に持っていく方針を立てたので、大久保の心が全開するときをじっと待ち続けた。

大久保清の詩
最も愛するもの ●●と××(子の名前)

ひと目でよい/会って話がしたい

心は揺らぐ/崩れそうな心に誓ったことから/だから会わないことにする

胸はさわぐ/会いたい気持ち/思うと衝動にかられる

会いたい/会ってはならぬ

/会いたい/会ってはならぬ

なぜ…それは/自分の路線を守るため

許してくれ/悪い父を

6月25日 第三の犯行全面自供に対する条件と大久保清の態度の軟化

この日大久保清は「第三の犯行全面自供に対する条件」なる7項目を挙げた。

1.死体埋没現場に案内するときには報道関係者を一切同行しないでもらいたい。

2.俺が自供したら図面と自供調書を作成しないで、俺が指定する時間に出発すること

3.死体が発見されてその件に関する事件処理が一通り済んだところで面会させてもらいたいか(父母、兄夫婦、姉妹、妻の母たち)

4.兄が俺と面会したときの態度如何によって、俺が新聞に発表する原稿を書かせてほしい。

5.死刑執行後の死体引受人となる念書を、兄に書かせてもらいたい

6.兄は「財産をくれなければ家に火をつける」と父を脅迫したので 兄を告訴したい。警察はこれを受理して兄を逮捕してくれ。

7.ペン、ノート、インキを買って、取り調べの合間に手記を書かせてもらいたい。

捜査員
お前の7つの項目は、ひとつも受け入れられないよ。

だから無条件で自供することだな

大久保清
それならこっちも自供しないよ
捜査員
自供する・しないは別として、お前に聞いてもらいたいものがあるんだ。

実はお前に感化されて、俺も散文詩というやつを作ってみたんだ。

俺は文学なんてものはわからないし、こんな詩をこしらえるのも初めてだ。

笑われるかもしれんが、まあ聞いてくれよ

捜査員は大久保の子ども時代をテーマにして詩らしきものを作ってみた。

もちろんこれも大久保清を落とすための作戦である。

最後に「子供のころの純真さに戻ってほしい。私は焦らずにその時がくるのを、いつまでも待っている」と呼びかけた。

捜査員
どうだ大久保。

へたくそだろ。先輩のお前にはかなわんな

大久保清
うまい下手は問題じゃない。この詩を俺にくれ
捜査員
どうするんだ?
大久保清
俺が死刑になる時、この詩を胸に抱いていきたいんだよ

その直後から 大久保清の態度が軟化した。

そして条件2.については簡単な供述調書の作成に応じた。

そして4.5.6.7.については取り消してもよい。

1.と3.だけ受け入れてもらえば、明日被害者の一人が埋めてある場所へ案内すると言う。

取り調べ班が1~3の条件について努力する旨を約束したところ、大久保清は第三の犯行についてをようやく語り始めた。

大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その5につづく
 
 
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