大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その3

大久保清 大久保清連続殺人事件

大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その2のつづき

5月21日 榛名湖畔殺人事件

県立榛名公園で働く公園管理人のМさん(48歳)はこのところ2度、奇妙なことを目撃していた。

はじめは5月7日午後3時半。

いつも通り公園内をパトロールしていると、榛名湖の東2キロくらいの山林の中に 白いロータリークーペの新車が停まっていて、傍らにスコップを持った男が立っていた。

男はスコップで車のナンバープレートを隠している。

管理人はそれを見たとき、こいつはツツジ泥棒ではないかと神経をとがらせた。

ツツジ泥棒を警戒するのも公園管理人の任務のひとつだ。

Мさんはさりげなく白いクーペに近づいてみたところ、車内では若い女の子がジュースを飲みながらラジオを聴いている。

これはアベックの観光客だろうと思い、Мさんはその場を立ち去った。

2度目は5月15日。

Мさんが定刻のパトロールをしていて同じ場所を通りかかってみると、先日、ロータリー・クーペの男が立っていた辺りに土盛りができている。

これは何だろう?と思ったが、つつじを掘った跡ではないなと思い、そのまま見過ごした。

その直後くらいから連日のように大久保事件のニュースが流れ始めた。

クリーム色のロータリークーペ、小太りの三十男、死体を埋めた…これらが先日のカップルを思い出させた。

Мさんはそのことを二人の同僚に話してみた。

同僚
それは大久保かもしれないぞ。ひょっとしてひょっとするということも…

三人はすぐさま現場に向かい、スコップで土盛を慎重に掘り返してみた。

20センチくらい掘り下げても何も出てこない。

まさかなあ、思い過ごしだったかな…と思いつつ、深さ30センチのところまで掘り下げたときに、何やら白い布地が見えてきた。

さらに掘り下げてみると長い黒髪の頭部が現れた。

真っ青になった三人は急いで110番通報。

そこから発見された遺体は松村恵子ではなく、行方不明で追跡調査中だった8人の中の一人、女子高生の津川美恵子(17歳)と判明した。

津川美恵子が失踪したのは3月31日、学校は春休みで、ボーイフレンドからの電話で午前11時くらいに家を出ていた。

津川美恵子は彼氏と別れ、帰宅するために午後6時23分発の列車に乗り、6時33分頃に新町駅で下車したところを、同じ列車に乗り合わせた三人のクラスメートが目撃している。

ところがその後にぷっつりと消息を絶っていた。

刑事
大久保、死体が出たよ
大久保清
松村恵子のか?
刑事
いや、津川美恵子だ
大久保清
そんな女、知らねえな

津川美恵子(17歳)の死体が発見されたので、榛名湖畔殺人事件捜査本部が設置された。

これは大久保清が犯人かどうかは関係なく設置された捜査本部だったが、当局としては大久保清に容疑をかけていた。

さらに松村恵子もこの付近に埋められているのではないかと推測した。

そして松村恵子・津川美恵子両名に対する殺人と遺体遺棄について大久保清を取り調べたが、大久保は終始黙秘を続けた。
 
 
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5月22日 失踪女性の公開手配

捜査本部はこの日、松村恵子・津川美恵子以外にリストアップした失踪女性の公開手配に踏み切っている。 

※以下の被害者氏名はすべて仮名

川田静子(17歳)…伊勢崎市・高校3年生

4月18日に国鉄伊勢崎駅でボーイフレンドとデートの約束があり、家人には「中学時代の同窓会に出席する」と言って、午前10時50分頃家を出た。

この10分後に自宅に電話して、友人T子宅の電話番号を聞き、この後所在不明になっていた。

同窓会にはあらかじめ欠席通知が出してあり、ボーイフレンドには用事ができたと言って伊勢崎駅にはいかなかった。

川合昭代(18歳)…伊勢崎市・電電公社職員

5月3日午前10時20分に自宅を出てA自動車教習所へ行き、午前11時30分から1時間教習を受けた。

翌日実施の運転技能本検定の受験申し込みをして、その後所在不明となった。

※この日の午後2時頃、国鉄伊勢崎駅でマツダ・ロータリークーペの助手席に川合昭代が乗っているのを友人が目撃したことがわかり、大久保清と川合昭代の接点が判明した。

加藤晴美(16歳)…前橋市・高校2年

4月27日午後6時ごろ下校。

旧友と一緒にパスに乗り、6時30分バス乗り換えのため前橋市本町のバス停で下車した後、所在不明となった。

※その後の捜査で、所在不明になった時間と場所に接近して、三名の女性が大久保清らしいベレー帽の男に誘いかけられており、大久保と加藤晴美の接点が浮かんだ)

井川千鶴子(19歳)…前橋市・県庁職員

前橋市内でアパート住まいをしていた井川千鶴子は4月16日(金)から無断欠勤が続いたので、19日に職場の上司から実家に連絡が取られ、実家は初めて所在不明を知った。

警察の調べでは、4月15日午後10時30分頃、隣室の女性(23歳)と言葉を交わしたのが彼女が目撃された最後だった。

3月下旬ころに男友達に「アマチュアの画家にモデルに誘われている」と洩らしたことがあり、大久保清の犯行手口に似ているのでもっとも憂慮されていた。

小橋孝子(21歳)…前橋市・家事手伝い

5月10日午後1時頃、友人に会うために家を出た。

前橋市内で友人に会い、午後6時頃友人と別れたが、その後帰宅していない。

行動的な性格で容貌に自信を持っていた女性なので、相当数の男性と交際していたらしい。

大川美知子(17歳)…高崎市・ウエイトレス

大川美知子は姉の経営するアパートに住み、ゴルフ場のウェイトレスとして働いていたが、4月5日から7日の間に所在不明となった。

過去に家出歴が2回あることから家人は楽観していたが、大久保清事件が連日報道されるようになったので、万一を考えて実父が非公開の捜索願を出した。
 
 
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5月23日 俺は冷血動物だ!

大久保清は松村恵子、津川美恵子両名の殺害に関しては依然否認のまま。

大久保清
俺は人間を捨て、人間の血を捨てた冷血動物だ。

両親も人情もないんだよ。被害者も遺族もかわいそうだと思わない。

親も妻子のことも考えない。人間を憎み、血を憎んでいるんだ。

だからどんなことがあっても話さない。俺はどうなっても構わない

5月24日 大久保清に寄り添う捜査班の心理作戦

大久保清は相変わらずの反抗を続けていた。

大久保清
俺には人間の血が流れていない。冷血動物だ。心のよじれきった人間だ。

人間を信用するな、憎め、と心に誓っている。戦うんだ。だから話さない

連日こんなやり取りを続ける大久保清に対して、取り調べ犯は戦術を変えることにした。

正攻法から心情作戦に切り替えたのだ。

大久保が感銘を受けているという詩人ライナー・マリア・リルケの詩集を買ってきて、その中からいくつかを読んで聞かせた。

神妙に聞き入る大久保清の心が安定している時を見計らって、両親の窮状や妻子の悲しい思いや彼らが事件の解決を願っていることなどを話しながら こう説いていく。

捜査員
被害者の家族の心情を察して、早く死体を遺族に返してやれ

すると大久保清は目に涙を浮かべたが、話を事件に戻すと大久保は豹変して わめきちらした。

大久保清
これが小さな人間の最後の抵抗だ!

肉親に裏切られ、前科者としてしいたげられた者はこれほど悪くなるんだ!を世の中に知らせてやる。

極刑に情状はない。だから最後まで戦う。

取調官にはすまないが俺の最後のあがきだ。運が悪かったと思って諦めてもらいたい。

これから俺がもっと悪い奴だということが、だんだんわかってくるはずだ

大久保清に心境を語ってみればと捜査員が水を向けると 今までの刑務所生活や周囲の者の裏切り、両親や妻子のこと、兄に対する憎しみ、自分の犯歴、山のこと、詩や音楽のことを 大久保はとうとうと語った。

そして最後にこう締めくくった。

大久保清
俺は極刑を覚悟している。最後のあがきだから 事件のことは話さない。

圧力の調べは俺の敵だ。徹底的に戦う。

桜のマーク(警察)に殺されるのは嫌だ。自殺するかもしれない。

 
 
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5月26日 松村恵子事件を自供

この日初めて大久保清の口から「謝罪」という言葉が出た。

大久保清
自分の犯した罪は覚悟しているんですよ。被害者に謝罪したい。

俺は死刑になる前に言いたいことを「お別れの子守歌」と題して出版し、世の中の人に知ってもらうつもりだ。

だが事件の大きさを考えると、自供した後の虚脱心から、毎日自分の死について考えるようになると思う。

だから裁判を受けるまで、生きることに耐えられないかもしれない。

俺には三島由紀夫ほどの大往生はできないけど、主張すべきことは主張して、男らしく死んでいきたい。

もし俺が死んだら、俺の意思を両親、妻子、姉妹に伝えてもらいたい

明らかに大久保清の心が揺れているのを捜査員は感じ取っていた。

大久保清
俺は今も人間不信の気持ちがいっぱいだ。

自供しようとする気持ちと、自供してはならない気持ちとが五分五分だ。

そしてしばらくしてから 大久保清は松村恵子に対する犯行を自供した。

松村恵子が「私の父は刑事だから、変なことをすると言いつけるわよ」と言ったから、大久保清は逆上して彼女の首を絞めて殺害したと。

松村恵子が乗ってきた自転車を大久保清が近くの信用金庫の自転車置き場まで持っていったので、大久保は自転車に残してきた指紋が気になって仕方がなかった。

それで翌朝、指紋をふき取りに行き、その場で恵子の兄・松村彰に声をかけられたのだった。

捜査員
今度は本当だろうな?
大久保清
嘘じゃない。死体を埋めた場所も教えるよ

そう言って大久保清は埋没現場の地図を書きはじめた。

5月27日 松村恵子の遺体を発見

捜査員と大久保清は死体埋没現場とされた妙義湖方面へ向かった。

現場は標高1000メートル級の岩が連なる裏妙義の、松井田町側の山すそである。

妙義湖に入る山道は報道陣の車でごった返していたが、現場に入る手前で警官により通行規制が敷かれた。

大久保清が示した場所の桑の木の根元をスコップで掘っていくと女性の死体が現れ、それが松村恵子21歳であることが確認された。

全てが大久保清の供述と一致していた。

そしてこの日の午後9時、大久保清は3回目の再逮捕となった。

大久保清は犯行の情景、被害者の苦悶までこと細かく淡々と話したが、その表情には得体のしれない恍惚感が漂っていた。

間違いなく彼は異常犯罪者だと取調官は感じた。

松村恵子の遺体発見により「榛名湖殺人事件捜査本部」は「大久保清連続女性誘拐殺人事件捜査本部」に改称された。

松村恵子事件の自供後、大久保清は取り調べに対して複数女性殺害をほのめかしながらも、再び反抗を開始した。

大久保清
俺には人間の血は流れていないんだ。

冷血動物だから言わない。秋まで自供しない。

ひとつ自供すればみんな自供すると思っているかもしれないが、そうはいかないよ。

死刑になることは覚悟しているんだ。

全部自供するのも半年かかるか、1年かかるかわからないよ

 
 
大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その4へつづく
 
 
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