大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その2

大久保清連続殺人 大久保清

大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その1のつづき

大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その1

昭和46年(1971年)5月15日 大久保清を再逮捕

わいせつ目的誘拐罪で逮捕された大久保清は、松村恵子について はじめはこう供述していた。

大久保清
松村恵子をモーテルに連れ込もうとしたにときに、彼女は車から飛び降りて 前橋方面から来た乗用車を止め、それに乗って高崎方面に逃げてしまった。
そのあとのことはわからない。

ところが大久保清は翌日に前言を撤回した。

大久保清
これまでに言ったことはウソだ。
実は俺は人に頼まれて、若い娘を誘拐して売り飛ばしていた。
松村恵子もそのうちの一人だ。

府中刑務所服役中に知り合った仲間の紹介で暴力団員と出会い、この男の依頼で娘を誘拐して売る約束をし、4人を誘拐した、と大久保清は言う。

そして口元に泡を吹きながら こうもわめきたてた。

大久保清
ヤツは組織暴力団●●組の幹部だから、俺が自供したことがわかると刑務所の中にいても殺される。
それを覚悟して喋ったんだから、これは本当のことなんだ!

ところがしばらくすると、大久保清はまた態度と供述を一転させる。

大久保清
俺は死刑を覚悟してやったんだから何も言えない

警察で逮捕した被疑者は48時間以内に検察庁へ送致するのだが、この段階では大久保清を送検しても検事は起訴を見送るだろう…と思われた。

そんな折、富岡署で捜査中の婦女暴行事件の容疑者が 大久保清に間違いないらしいという情報が飛び込んできた。

Y子が被害に遭ったのはひと月ほど前の4月11日だった。

通報を受けた富岡署はY子を伴って藤岡署へ行き、大久保清の面通しをさせた。

Y子
間違いありません。この男です!

彼女の証言に基づき、大久保清は再逮捕され、身柄が藤岡署から富岡署に移された。
 
 
スポンサーリンク



 
 

5月16日 ポリグラフ検査(嘘発見器)

午前中はY子事件の取り調べが行われたが、松村恵子事件の時とはうって変わって、Y子の件を大久保清は素直に自供した。

そして午後には松村恵子事件の調べに入った。

捜査員
嘘をついていないのなら、ポリグラフ検査(嘘発見器)をやるか
大久保清
いいさ。俺は嘘を言ってないんだからさ。

そして大久保清は承諾書を書いた…「私は松村恵子事件について、ポリグラフ検査を受けることを承諾します」

科学捜査研究所副所長に一人の刑事が立ち会い、机の上に測定装置が置かれる。

大久保清の胸部にはゴム製の蛇管が取り付けられ、右手の日本の指先に電極、左上腕部に血圧帯を巻きつける。

「君は5月9日、藤岡市内で松村恵子さんに声をかけ、車に乗せてドライブしたか?」
「君は5月9日、関西の暴力団●●組幹部Yに、この娘を10万円で売り飛ばしたか?」
「君は5月9日、松村恵子さんを殺したか?」
「殺害方法は、首を絞めたのか?」
「死体の遺棄場所は山か、畑か、野原か?」
「死体は埋めたのか?」

被疑者しか知りえない核心部分の質問に移っていくと、松村恵子殺害について強い反応が現れる。

次第に大久保清は額から脂汗を流し、突然叫び出した。

大久保清
やめてくれ!喋るからやめてくれ!
捜査員
(よし!これで一気に落とせる!休まずに一気に調べよう)

ところが、ここから大久保清は黙秘を決め込んだ。

そして1時間後、だんまりを決め込んでいた大久保清が突然、怒気を含んだ顔で喋り出した。

大久保清
留置場に入ってから、俺はいろいろ考えた。松村さんやその家族のことを考えるとなかなか寝付けなかった。

取調官は俺をずいぶん悪い奴だと思うだろう。そう、俺は本当に悪い男だ。とことんねじれてしまったからな。俺を調べることになったあんた方は、運が悪かったと諦めてくれよ。

俺は罪を覚悟してるさ。でも心の準備ができてないから まだ言えないよ。嘘発見器にかけてもダメだよ

 
 
スポンサーリンク



 
 

5月16日 嘘八百の供述と現場引き当たり

大久保清は再び黙秘に入った後、気が変わったのか、松村恵子事件の供述を始めた。

大久保清
5月9日、松村恵子を誘拐し、伊勢崎市の「キューピット」(仮名)という喫茶店に寄った後、埼玉県本庄市までドライブしてから境町に寄った。

利根川の上武大橋の下の堤防で乱暴しようとしたら強く抵抗されたため、首を絞めて殺した。

死体はその近くの砂利の穴の中に埋めてある。その場所に案内するから連れて行ってくれ

そのあとすぐ、捜査員は大久保清を連れて 現場引き当たりに出発した。

ところが行ってみると、現場の状況が大久保清の供述と一致しない。

大久保清の供述は全部虚偽だ。

現場にある上武大橋は工事中で一方通行であり、河川敷へ降りることさえできない状況だった。

大久保清は現場で泣きだし、嘘じゃない!と何度も主張したが、帰途の車内でふんぞり返り、薄笑いを浮かべてこう言った。

大久保清
権力が俺に圧力をかけて調べをしたから嘘を言ったんだ。俺が悪いんじゃない
 
 

5月16日 所在不明者リスト

5月16日に県警本部は1回目の捜査会議を開いている。

■松村恵子を埋めた場所は嘘だったが、殺害した自供は真実である。
■大久保清は松村を含む4人の女性を誘拐して売り飛ばしたという供述をしているが、これは「殺害」を「人身売買」にすり替えたものとみられる。

捜査本部はこの2点を確認し、松村恵子殺害の追及と 県内の行方不明者の女性についての追跡調査を開始した。

そして少年防犯課が大久保清が関わった可能性がある若い女性の失踪届を洗いだした。

大久保清が府中刑務所を出所した昭和46年3月2日から逮捕された5月14日の間に家出人届が出された女性の中から、15~22、23歳の年齢の 大久保が狙いそうな若い女性を20人抽出したが、その中に家出の原因・動機が不明で、失踪状況が不自然な者が7人いた(全員が大久保清の毒牙にかかっていた)

※以下、すべて仮名(事件発生日)

1.前橋市 井川千鶴子 19歳 県庁臨時職員(4/17殺害)

2.前橋市 加藤晴美 16歳 前橋育英高校2年(4/27)

3.多野郡 津川美恵子 17歳 高崎市立女子高3年(3/31)

4.高崎市 大川美知子 17歳 ウエイトレス(4/6)

5.伊勢崎市 川合昭代 18歳 電報電話局職員(5/3)

6.前橋市 小橋孝子 21歳 家事手伝い(5/10)

7.伊勢崎市 川田静子 17歳 伊勢崎女子高3年(4/18)
 
 
スポンサーリンク



 
 

5月19日 大久保清が実兄を恨む理由

大久保清
俺がどうして悪い人間になったのか聞いてもらいたい。その原因は兄貴らのせいだ。

兄貴は俺が出所してから、別居中の妻の実家に行き「子供のためにも清のところには戻らない方がいい。奴の素行は直らない」と言って、俺と妻子を割く策謀をした。

それで妻子と一緒にやり直す望みが絶たれた。だからやけを起こして、また悪い事をする気になった。

兄貴は保護司のところにも行って「清を刑務所に戻してくれ」と申し込んだ。これが実の兄がやることか。腹の底から兄貴を恨んで、殺してやりたいと思うようになった。

ガソリンで放火し焼き殺してやろうかと思ったが、窓越しに見た兄貴は俺と顔がそっくりだし、親父ともよく似ている。それで俺の決心は鈍ってしまった。

俺はその後も兄貴をつけ狙ったが、とうとうやれなかった。

これ↑だけでは話が分かりづらいので、以下補足↓

大久保清は府中刑務所を3月2日に出所してから 警察に捕捉される5月13日までの間に 妻・節子に復縁を求めて11回 妻の実家を訪れている。

大久保清は節子に謝罪し更生を誓ったが 節子からは絶対に戻る気はないと、きっぱりと拒否されている。

そのいちばんの理由は3月17日の大久保清の実兄の訪問にあった。

3月17日に兄が節子の実家を訪れ、節子と彼女の母にこう言ったのだ。

大久保清の実兄
今、八幡(大久保宅の所在地)では舅(清の父)と嫁(節子)がみだらな関係にあるともっぱらの噂で、姑(清の母)がその現場を押さえたと、新興宗教の仲間に相談している。

また 姑(清の母)が、節子が実家に帰るときに牛乳の売上金50万円を持っていったので、支払いに困ったと近所の人に言いふらしている。

そんな状態だから子供の将来を考えて、清の元に戻らない方がいい

これを知った妻と義母は「実の兄さんまでそういうのだから、あんたの所に戻る気はない」と言い張った。

大久保清
俺はこの時、妻との関係はこれでおしまいだと思えた。
そして兄の仕打ちに憤慨した。

この時 大久保清の実兄は 舅(清の父)が息子(=清の兄)の妻2人に手を出したという事実も節子に打ち明けた。

それを聞いた節子の母は「娘をそんな家へ絶対に返さない」と断言したという。

「舅と嫁のみだらな関係」と「嫁が五十万円持ち逃げした話」は もちろんどちらも清の母親がついた真っ赤な嘘であるが、節子の実家からこれらの話が大久保清の耳に入ったとき、清は逆上した。

大久保清は兄の家に向かい、兄を車に乗せて実家に向かった。

実家に到着した時、母は起きていたが、父は布団をかぶって小さくなっており、清のただならぬ逆上に 二人ともブルブル震えていた。

大久保清
一体誰がこのタネをまいたんだ?親の前で決着をつけようじゃないか。

彼は刑務所に二回も行ってる。タダじゃおかねえ。

人を殺すのは何とも思っちゃいねえんだ!

こう怒鳴り散らしていた清がしばらく沈黙した後、突然 

大久保清
はっきりしな!はっきり!

と破れ鐘のような声を張り上げて 父と母を睨み据えた。

そしたら母がポッと言った。

大久保清の母
おバアさん(母)が言ったかもしれないよ

それを聞くと清の顔から途端に血の気がすーっと引いて蒼白になった。

大久保清
バッカ、ヤロゥ!
大久保清の兄
清はわぁっ!と大声で泣きだし、座布団をひっつかんで顔に当て、ひっくり返って両腕を十字に組みました。

悲しみがその両腕に伝わり、びりびり震えていました。

母も泣いてました。私も全身の血が逆流する思いでした。

今、弟は、この世の終わりの怒りと、絶望感に打ちひしがれている。

その根本の原因は父と母ではないか。

特に父は親の価値もない人間だ。

  

via:「週刊現代」昭和46年6/10号

大久保清はこれが彼を悪事に走らせた理由だと言っている。

確かにこれも一因かもしれないが、やはりそれだけではないと言い切れるだろう。

なぜなら大久保清は一種の性格破綻者である。

大久保清の生い立ちにもある通り、女癖が悪い父親と、嘘ばかりつく母親の血を受け継いだまま、何度も悪事を繰り返しても 甘やかされ続けて それを強制されることなく大人になってしまったのだ。

大久保清
俺は死を覚悟している。捕まる前から徹底的に戦うことにしていた。

死刑に情状はない。だから取り調べの圧力や権力に絶対に負けない。

俺は人間の血を持たない冷血動物だから、人の道も人情も通じない。

俺が殺人をやっていると思うなら、警察で好きなようにして裁判をしてくれ。

俺は自供しない。死体があるなら、警察で見つけてくれれば認めてやる。

俺は戦ってるんだ。取り調べには応じられない。

 

大久保清 連続女性誘拐殺人事件の全貌 その3へつづく

 
 
スポンサーリンク


 



大久保清連続殺人 大久保清