左からシャチハタネーム印、ヒメウズラの卵、オカメインコの卵、ジュウシマツの卵
鳥の卵の重さは体重の3%といわれますが、ヒメウズラは体重が50グラム、オカメインコは100グラムなのに、卵の大きさはほぼ同じです。
お腹に卵ができているのに産み落とせず、詰まってしまっている状況が「卵詰まり」です。
微量栄養素の不足や日光浴不足、産卵を繰り返すことなどから体内にカルシウムが不足することも卵詰まりの原因であり、秋から冬にかけて多く起こります。
オカメインコの卵詰まりの症状と見分け方!産卵できない原因と予防法
卵詰まりは症状が軽ければ保温することで無事産卵できることもありますが、それでも産卵できない場合は早めに病院に相談することをおすすめします。
卵詰まりは死亡率が高いので「もう少し様子を見よう」で手遅れになることもありますから 注意が必要です。
寒くなり始めは卵詰まりが増える時期です。産卵時は副交感神経が優位でないと産道が弛緩しません。寒いと交感神経が優位になるので産道が弛緩しにくくなります。しかし前もって保温すると発情しやすくなります。発情抑制には調子を崩さない程度の温度を保ち、卵ができてしまったら冷やさないが基本です
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 14, 2020
インコの卵詰まりの症状は?
卵詰まりには、大きく分けて卵停滞と難産の2つがあります。卵管には子宮部と腟部があります。子宮部は卵殻を作る部分で、ここから卵が動かないのが卵停滞です。人で言う陣痛が起こらず卵が子宮部に停滞している状態です。卵停滞の場合は調子が悪くならず、すぐに気づかないことがあります。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 16, 2020
卵詰まりをしても必ずしも具合いが悪くなるとは限りません。長い期間卵管内に卵が停滞しカルシウムがついて変形していることがあります。この場合は手術でなければ治すことができません。雌は時折お腹を触って硬いものがないかどうかチェックしましょう。健康診断も大切です。https://t.co/7rLcgRZyMG
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 29, 2022
衰弱
インコは卵を産もうといきみ続けることで体力が奪われ衰弱します。
卵詰まりが初期のうちは落ち着きなくケージの中を動き回りますが、ひどくなるとケージの隅でうずくまり動かなくなります。
卵詰まりを起こしたばかりのときはまだ元気に見えるため、飼い主が卵詰まりに気づかないことが多いです。
体内では卵詰まりが悪化していて、突然ショック状態となり死亡する場合があります。
食欲不振と多飲
卵詰まりがひどくなると、お腹の圧迫により餌を食べなくなります。
水をよく飲むようになり、嘔吐や下痢を引き起こすことが多いです。
さらに衰弱すると、何も摂取しなくなり体重が激減します。
合併症
卵による内臓の圧迫や生殖器官の異常などにより、様々な合併症状が起こります。
お腹を圧迫…嘔吐や腹痛、腹膜炎、腹壁ヘルニア
肺や気嚢を圧迫…呼吸が荒くなる
生殖器官の異常…卵管炎、卵管蓄卵材症(卵管の中に卵となる物質がたまること)
尿が出ない…腎不全
インコの卵詰まりの見分け方
卵があるかどうか触ってみる
インコを保定し、お腹やお尻のあたりを触って卵があるか確認します。
丸くて硬いものがあったら、卵の可能性が高いですが、軟卵の場合は触ってもわかりません。
卵が出かかっている状態では、インコのいきみに合わせて総排泄孔から卵が見えたり隠れたりします。
卵を確かめようとインコのお腹を圧迫しすぎると、内部で卵が割れて卵管を傷つけてしまいショック死する可能性があるので注意しましょう。
確実なのは保定してお腹を触ることです。上手く保定できない場合は、お腹の張りや急な体重の増加で判断します。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 15, 2020
お腹が膨らんでいる
卵があるか触って判断できないときは、インコのお腹やお尻、羽が膨らんでいるか確認します。
個体によってはもともと膨らんだ体型をしていて卵があるかわからない場合があるので、通常時のインコの体型をよく観察しておきましょう。
普段から体重を計って把握しておくと、体重が急増していた場合に卵の重さだと判断できます。
インコがいきんでいる
インコがいきんで、卵を産もうとする動作がみられます。
かがんでお尻を上げ、羽を震わせたりお尻を振ったりします。
いきむときに声を上げることも多いです。
いきみすぎて腹圧がかかり総排泄孔が腫れたり、卵管などの生殖器が総排泄孔から出てしまった場合はすぐに動物病院へ連れていきましょう。
フンや尿の異常
水を多く飲むため軟便、粘液便、下痢を起こします。
卵詰まりが重症化すると、総排泄孔に卵が詰まっていることが原因で、フンや尿が排泄できなくなることもあります。
インコ・オウム類、フィンチ類は盲腸を持たず大腸もほとんどありません。そのため哺乳類に比べて消化管が短く食物の通過速度が速いです。人のような便秘になることはほとんどなく、便が出ない時は腸閉塞や胃腸腫瘍、腹膜炎、排便神経・筋障害、卵詰まりや腫瘍などの物理的圧迫などによって起こります。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 2, 2021
卵詰まりで総排泄腔が圧迫されると排便ができなくなることがあります。鳥は腸の通過速度が速いため、排便できなくなると腸に便が詰まって膨らみ負荷がかかります。今回ブンチョウが2個卵が詰まって便が出なくなりましたが、緊急手術でことなきを得ました。便が全く出ない時は要注意です。 pic.twitter.com/n51gZsKbma
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) November 4, 2022
卵詰まりかも?…動物病院で伝えるべきインコの状態4つのポイント
卵詰まりが疑われたら、自己判断で様子を見ずにすぐ動物病院へ連れていきましょう。
インコは体が小さく体力の消耗がはやいので、最悪の場合その日のうちに死んでしまうことがあります。
そして卵は1日でできて産卵するものなので、様子を見ていいのは1日だけです。もし病院でそのうち産むから様子を見てといわれても、何日も様子を見ずにすぐにセカンドオピニオンを受けてください。https://t.co/cS5RtIoUOF
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 5, 2022
動物病院は鳥に詳しい獣医のいる動物病院を選んでください。
卵詰まりを起こしているインコは慎重に扱わなければいけないうえ、誤診や誤った治療法は命にかかわります。
オリーブ油を注入したり、ひまし油を飲ませたりしても、卵詰まりには全く効果がありません。
油を使うとインコの羽が汚れ、体温の低下や毛引きの原因になるだけで、ひとつもいいことはありません。
卵詰まりの時にオリーブ油を浣腸すると産卵するという情報がありますが効果はありません。産卵できないのは産道が緩んでいないからなので、油を浣腸しても卵管内に入って潤滑されることはありません。卵詰まりの時にお家でできることは保温です。病院に行くまでは足が温かくなるまで保温しましょう。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 16, 2020
動物病院へ連れていくときは、寒い時間帯や時期はしっかり保温をしておきましょう。
動物病院に診せる際は、以下のポイントを獣医に伝えるとスムーズに診療が進みます。
お腹を触って卵を確認できている、総排泄孔から卵が見えている
いつ頃から産卵がはじまったか
直前まで他の卵を産んでいたか
普段よりお腹や羽が膨らんでいるか
インコがいきんでいるか
食欲はあるか、水を大量に飲んでいるか
フンや尿は出ているか
初めての産卵か
過去の産卵で卵詰まりを起こしたことがあるか
時間が経つほど発情が止まる可能性があり、待つほど産道が開かなくなります。Ca注射をして様子を見ようとする病院もありますが、Ca注射で産卵が促されるのはカルシウム不足の時だけです。また殻ができていないことが必ずしもCa不足ではありません。殻ができるまで数日様子を見てはいけません。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) December 9, 2022
卵管の機能障害があると血中Ca濃度が高くても卵殻形成に至らないことがあります。機能障害の原因の多くは不明ですが、血流障害や暑さによる過呼吸が考えられます。また卵殻膜まで形成された段階で停留し、卵殻腺まで降りて来ないと卵殻ができません。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) December 10, 2022
【原因1】インコの卵詰まりの原因はカルシウム不足が多い
卵の殻はカルシウムで形成されており、卵を産むごとにどんどん体内のカルシウムが使われて不足していきます。
カルシウムが不足すると卵の殻が正常に形成できず軟卵になり、卵詰まりを起こしやすくなります。
軟卵は正常に押し出せず卵管の中に留まってしまうことがあり、そのまま殻が作られ続け過大卵になったり卵管と卵が癒着してしまったりする場合があります。
カルシウム不足を補う副食のすすめ
カルシウムは卵の殻を形成するだけでなく、筋肉や神経が正常に働くためにも重要です。
子宮筋の収縮や産卵のための体力が不足すると、卵を押し出せず卵詰まりを起こすこともあります。
産卵時の急速なカルシウム要求を補うにはカットルボーンが推奨されます。カットルボーンに含まれる炭酸カルシウムは多孔質な構造のため胃内で溶けやすく、容易に腸から吸収されます。そのためボレー粉よりも少量の摂取ですみます。そして胃の負担を減らすことができます。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 6, 2021
カットルボーンの塩分は少ないので、心配ありません。もちろん多量に食べればカルシウムさえも多量摂取になるので、適度に食べさせる必要があります。カットルボーンは、粉末にして与えても大丈夫です。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 7, 2021
卵殻も炭酸カルシウムでできており、お勧めできます。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 7, 2021
産卵時はカルシウムだけでなくタンパク質も補給しなければいけませんので、ラウディブッシュのブリーダーらかハイエネルギーブリーダーを使うのがお勧めです。これらを食べないようでしたらカルシウム捕球にはカットルボーンがお勧めです。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 7, 2021
シード食の鳥の卵詰まりの予防には日常的なサプリメント摂取がおすすめ
卵殻のカルシウム量は血中カルシウム量よりも多いので、卵がつくられる時には、食物や骨からカルシウムを総動員しています。
だからカルシウムが欠乏 →低カルシウム血症 になると卵殻がうまく作られなくて軟卵ができて卵を排出できずに卵詰まりを起こします。
カルシウムの適度な補充は産卵期には必須ですが、シード食ではカルシウムは必ず欠乏します。
そのため副食として鉱物飼料(ボレー粉、カトルボーン、塩土)を補充するわけですが、それだけではカルシウムは補充できますが十分に吸収ができません。
カルシウムを吸収するにはビタミンD3とマグネシウムが必要ですが、鉱物飼料にはこれらが入っていないため、別途補充する必要があります。
シード食の鳥には総合ビタミン剤などのサプリメントを使うことが、卵詰まりの予防のひとつとなります。
粉末タイプのサプリメント
液状タイプのサプリメント:湿気が気になる方には液状がおすすめ
【原因2】インコの卵詰まりの原因が日光浴不足であることも多い
気温が低くなる冬は、特に卵詰まりが起こりやすくなります。
インコの産卵中は保温が必要ですし、冬は日光浴不足になりがちです。
日光浴が十分でないと、カルシウムの吸収に必要なビタミンD3が不足し、卵詰まりの原因となります。
環境の変化などによるストレスで産卵が中断されてしまっても卵詰まりは起こります。
運動不足や肥満が原因となることがあるので、飼育環境を正常に整えましょう。
野生と同等の日光が理想的な可能性がありますが、長時間の紫外線は酸化ストレスを増やす原因になります。そのため日光浴はできる範囲で行い、できない時は紫外線ライトを使用し、シード食であればカルシウムとビタミンDを補うようにしてください。日光浴や栄養が足りているかは血液検査で判定します。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 24, 2020

【原因3】インコの体調不良と産卵年齢の関係
インコの骨格に異常がある場合やインコが初産の場合、また高齢で体力が落ちていても 卵詰まりを起こしやすくなります。
腹壁ヘルニア、ホルモン異常による卵管口閉塞、卵管炎などの体の異常も卵詰まりを併発することがあります。
おかしいなと思ったら、できるだけ早く動物病院を受診してください。
インコの卵詰まり予防のために今すぐやるべき4つのポイント
卵詰まりの予防は「卵を産ませないライフスタイルの実践」これに尽きます。基本は発情抑制です。
発情抑制(過発情の予防)
卵詰まり予防のために最も効果的なのは発情抑制です。
本能による発情はある意味不可抗力ではありますが、飼い主とのかかわりが過発情になっているなら、そこから改めましょう。
メスの手乗り鳥はスキンシップで発情してしまうことがあります。
インコのくちばしを触らない(クチバシは性感帯になる)
肥満気味のインコは食餌制限でダイエットすることも発情抑制には有効です。

光(明るさ)の管理
1年中明るい環境で過ごしていて飼い主と一緒に夜まで起きていることも過発情の一因です。
発情は光が大きく関与しているため、野鳥が眠る時間には静かな環境で暗くして 休ませてあげるのが理想的です。
温度管理:四季を感じさせるのが理想的
飼育環境のの温度も発情には関係しています。
たとえばオカメインコを例にすると、彼らは本来寒さに強い鳥種ですから、雛・老鳥・病鳥以外の健康な成鳥には保温に神経質になる必要はありません。
北海道以外の温帯地域では無加温で過ごせますので、ヒーターを四六時中使う必要はありませんし、寒暖の差が大きい時にだけ注意をして少しずつ寒さに馴らした方が、発情は抑制されます。
そもそも食べるものにも住環境にも恵まれすぎている飼い鳥は、四季感を感じることが少ないです。
その結果「1年中産卵してもいい(できる)」と思えば、インコは年がら年中発情し産卵を繰り返します。
飼い主が過発情に悩むような若い鳥たちには、そんなに1年中ぽかぽか快適で常に明るい環境は要らないということです。
微量栄養素をしっかり補い定期的に日光浴をさせる
適切な栄養管理…ビタミンD3とカルシウム不足に気をつけて、定期的に日光浴を時々させること。
ガラス越しでは どんなに明るい光に当たっていても 日光浴にはならないことも知っておいてください。
ガラスだけではなく、アクリルも紫外線を通しません。
冬季はインコのケージをアクリルケース に入れている方が多いと思いますが、どんなに光が当たっていても アクリル越しでは日光浴の効果はないので注意してください。
紫外線のB波(UV-B)はガラスやアクリルを通過することができないので、屋外に出して紫外線を浴びさせる、反射光を利用して紫外線を浴びさせる(赤目の鳥は直射ではなくてもOK)室内で鳥用紫外線ライトを利用するなどして、インコに定期的に日光浴させる必要があります。
冬場はどうしても屋外に出してあげることができずに、日光浴不足に陥りがちですから、そういった場合は鳥用スパイラルライトを使う方法がおすすめです。
