インコが自分の羽をくちばしで引き抜く…いわゆる『毛引き症』は鳥の「自損」行為です。
知能が高い鳥、人なつこい鳥、愛情深い鳥ほど毛引きをしやすい傾向にあり、小型インコではラブバード(コザクラインコ・ボタンインコ)がダントツに多いです。
インコの毛引きの原因とは?やめさせるには初期の病院受診が重要
ある日ケージの底に落ちている大量の羽と
はげてボロボロになったインコを発見して
愛鳥の毛引きに悩む飼い主が少なくありません。
うちの子も凄い毛引き癖あるのですが、飛ぶのに影響でる部分には決して手を(嘴を)出さないので、何かルールや拘りがあるのかもしれませんね… pic.twitter.com/frUQgEKrYe
— チャイカ(仮) (@chaika_Be12) April 7, 2022
健康上の問題がある場合は「毛引き症」
そうでない場合は単に「毛引き」と呼びますが
ほとんどのケースが「毛引き」です。
インコの毛引きの原因とは?
毛引きの要因は大きく分けると4つ。
心理的要因は小さな子どもが
相手の気を引きたい時に見せる心理に似ています。
心理的要因:愛情問題・コミュニケーション不足
心理的要因:ひますぎる・退屈
環境要因:住環境が不適切
感染症(ボルナウィルスの神経障害 その他)
代謝異常
ホルモンバランスの異常…過剰発情・エストロゲンやテストステロンの過剰
ホルモンバランスの異常…ヨウ素不足による甲状腺機能の異常(皮膚のかゆみから毛引きに走る)
腫瘍…体に痛みがあると、気を紛らわすために毛引きをすることもある
アレルギー…食餌・ダニ・ホコリによる皮膚炎のかゆみから毛引きに走る
内部寄生虫…ジアルジア原虫など
慢性の亜鉛中毒…銀メッキケージを鳥がかじって起こる慢性中毒症(アメリカの研究段階)
亜鉛の欠乏…脱羽症状が現れ、毛引きにつながる可能性もある
不適切な栄養…高カロリー食・ビタミンA不足・カルシウム不足・栄養の偏り
羽毛への付着物…軟膏などの塗布・外傷の凝固血液の放置・脂粉の沈積
鳥に良くない刺激物…タバコ・芳香剤その他
ケージや住環境のストレスによるもの・近所の騒音
日光浴不足…毛引きする鳥は血中カルシウム濃度が低い傾向にある(ビタミンD3不足に起因か?)
水浴び不足…脂粉の蓄積や羽の汚れ
不順な換羽期
発情期
産卵したメス鳥(抱卵のための一時的な毛引きは病的ではない)
低湿度・極度な乾燥
羽毛の汚れ・コンディションの悪化
生活や就寝時間が不規則
しつけ・トレーニングやりすぎ・しなさすぎ
暇・退屈からくるストレス・メンタルの不安
毛引きが癖になっている…羽があることが次第に違和感に感じてくる
環境の変化…引っ越し・飼い主が変わった
環境の変化…飼い主の不在・孤立感・分離不安・情緒不安定
環境の変化…同居のペットが増えた・飼い主に子どもが産まれた
同居するペットへの嫉妬・鳥同士の関係悪化
喪失感…つがいの相方との死別など
クリッピング(羽を切る)…飛べないストレス
飼い主の気を引きたい…愛情の倒錯・「飼い主にウケた!」との思い込み・飼い主があまり鳥と遊んであげない・日によって違う接し方
毛噛み・毛齧りが楽しくなっている…自分の羽をかじるおもちゃにする
ヒトの食べ物を時々もらって食べているインコに毛引きが多い(もらえないことがストレスになる)
遺伝の可能性
人工育雛された個体
インコ類では雛の時に親に羽を抜かれると、その後毛引きになるのはよく見ます。毛引きが遺伝的なのかはまだ分かっていませんが、性格が似るところを見ると可能性はありそうです。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 10, 2021
このような例は人工育雛の鳥に時折見られます。また雛を母鳥から離すと、成鳥になってからストレス耐性が低く、人への攻撃性が出やすいことが報告されています。本当は噛み癖をどう躾けるかではなく成長期に親鳥と過ごさせ、正常な脳の発達と種特異的な行動を学ぶことの方が大切なのです。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) July 5, 2021
その可能性はあるかもしれませんね。雛は孵化してすぐに親から餌をもらうことでそ嚢内と腸内の正常細菌層を身に付け免疫力を高めています。毛引きは人工育雛が危険因子である事は報告されております。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) July 6, 2021
こちらは発情してお腹の羽を抜いたコザクラインコのメスです。メスは発情すると抱卵の準備として、胸からお腹にかけて羽を抜くことがあります。羽を抜くことで、皮膚に直接卵が触れるようになり、温めやすくなります。不確定産卵鳥の産卵が止まるシグナルは、胸からお腹にかけて卵が触れることと考えら… pic.twitter.com/YJRQOzjQBu
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) June 18, 2023
インコの毛引きは癖になるから早期受診が大切
インコが毛引きするところを発見したら、
鳥類の診察に長けた獣医師のいる動物病院を
できるだけ早く受診するのが望ましいです。
毛引きはクセになると改善が難しくなります。
毛引きをするコザクラインコの頸部です。1つの羽嚢から2本の羽が出ています。何度も抜いていると羽嚢が障害を起こして正常な羽が生えなくなります。最初はストレス対処で抜いていたものが違和感を感じて抜くことを繰り返します。羽嚢の障害は治せませんので毛引きは早期に対応する必要があります。 pic.twitter.com/oxvszaW3YS
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) May 4, 2021
インコの毛引きの原因究明を早急に!病気?メンタル?アレルギー?
毛引き症の原因は何らかの病気やアレルギー、
ストレスによるメンタルヘルスの問題など、
複数の原因が混在することが多いため
毛引きの原因を特定するのも困難ですから
獣医師の力を借りるべきです。
毛引き症は治療法がありますが、
毛引きは「病気」ではないので、
治療のしようがありません。
インコの毛引きをやめさせるのは大変ですが
フォージング(採餌行動)をさせてみるとか
日光浴を兼ねた散歩で良い刺激を与えるとか
飼い主がインコの心の隙間を埋めてあげるだけで
「毛引きが治った!」ケースもかなり多いのです。


インコの毛引きはとてもクセになりやすいので、
早期に発見することとともに
正確な原因をつかむことが解決のキーになります。
まずは鳥を診察できる病院を受診して
毛引きにつながる健康上の問題の有無を調べましょう。
インコの毛引きをやめさせる!病院受診で獣医に伝えるべき12のポイント
病院受診時に鳥の排泄物を持参すれば、
感染症や栄養状態を見ることができますから
フンを持参することをおすすめします。
インコの餌から住環境周辺で使われた薬品まで洗い出せ!
適切な治療を受けるためには、
飼い主ができるだけ詳細な状況をチェックして
獣医師に説明&情報を共有する必要があります。
以下の内容についてメモを取っておいたり
写真や動画を撮っておいて持参することもおすすめします。
毛引きが始まった時に環境の変化はあったか
どんな餌を食べているか?食欲は?食べる量は?
排泄物の量や状態は?
毛引きをするのは一日のうちのどんな時、どんなシーンでなのか?
毛引きをするのは飼い主が見ている時か、見ていない時か?
他の鳥と同居しているのか?新しい家族が増えて愛情の分散はなかったか?
ケージの置き場所と周囲の環境は?
刺激の少ない退屈な環境に置いていないか?
飼い主の多忙で、インコと接する時間が減ったことはないか?
家庭内での喫煙の有無は?
インコの生活環境周辺で使われた化学薬品の類は?
毛引きまで発展するかどうかは定かではありませんが、古い鳥かごのサビが原因でアレルギーを起こしたオカメインコもいます。
異常に通じる可能性がある心当たりをできる限り多く洗い出して、獣医師と情報を共有してください。
インコの毛引きはエリザベスカラーだけでは解決しない
エリザベスカラーは、自咬の場合は傷が悪化するので直ぐに着けますが、毛引きの場合はカラーを着けることのストレスが強いので、安易に着けることはお勧めしていません。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) January 24, 2022
エリザベスカラーは毛引きの根本治療になりません。着けても首や届く部分の羽は抜いたり齧ったりします。毛引きはストレス対処が目的ですが、それができなくなるだけでなく新たなストレスを与えます。自咬の時には着けないと齧り続けるので使いますが、ストレスが改善しないと外せばまた齧ります。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) October 9, 2021
毛引き症の原因や自咬の状態に応じて
獣医師の指導のもとでエリザベスカラーをつけて
毛引きできないように対処することもあります。
毛引きはインコの心の病気!「ストレス」のひと言で片付けられるものではない
毛引きが深刻な場合は、獣医の判断により
インコへ精神安定剤の投与を視野にいれますが
これはあまり良くないことなので最終手段です。
ヒトには抜毛症(自分で自分の髪の毛を抜く)という
精神疾患がありますが、
インコの毛引きはインコ版の抜毛症です。
つまりインコもヒトと同様にメンタルを病むということ。
精神的につらい思いをしているインコがたくさんいます。
色々な見方があると思いますが、抜くこと自体は報酬系が関与していますので、抜いていると気分良くやっているように見えるかもしれませんね。問題は、それを起こした環境に飼い主さんが目を向けなくなることだと思います。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) August 2, 2022
毛引きを始めたら早く対処しないといけないのは、この様な理由があります。毛引きの原因はストレスですが、何がストレスになるかと言うと寂しい、交流不足、退屈、嫉妬などなかなか改善が難しいことばかりです。毛引きは医療で治すものではなく、生活の改善が必要です。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) July 19, 2022
インコが毛引きをしていたら見て見ぬふりをせずに
鳥の診療に長けた獣医師のいる病院に相談してください。