認知症の銀行口座凍結対策!バレて一発アウトになった反面教師体験談
60代女性 私は独身で母親と二人暮らしでしたが、ある日母が認知症を発症したことによって、困った問題が浮上しました。認知症で銀行口座からお金が引き出せない…これは経済的余裕のない者には苦しい問題でした。
少し前から、母親の私に対する依存心が強まってきていることに気づいていました。私がそばにいない時にやたらと携帯に電話をかけまくってくるのです。
こちらが仕事中だろうが何だろうが、そんなことはお構いなしに電話が鳴り響きます。
嫌な予感は的中し、その数カ月後には母はまともに家のこともできなくなりました。
暴れるとか物を壊すとか暴力的なことはありませんが、放っておくと食事をしない。夜中にむっくりと起き出しては「泥棒が入った!」と騒ぎだす。私の外出中にも「泥棒が入った!」と通報して、警察を呼んだことがありました。
得意げに自分の武勇伝を伝えてくる母が「盗まれた」と騒いだのは通帳や印鑑でした。その少し前に「貴重品を自分で持っているのは怖い」と言って私に預けたものを「盗まれた」と思い込んでいたのです。
親のアルツハイマー型認知症発症でワンオペ介護の始まり
これはたぶん認知症だ…と私は思いました。
なんとか病院に連れて行き検査を受けさせたのですが、人前では格好をつけたがる性分の母。医師の前ではやたらとしっかり者のように振る舞っているのがわかりました。
しかし相手はプロですから、母が平静を装ったところでやすやすと騙せる相手ではありません。ただ、この時に医師が診断に悩んだのは、これはうつ病なのか?認知症なのか?でした。うつ病と認知症は初期症状が似ているそうです。
しかし病院で精密検査を重ねた結果、母の症状はアルツハイマー型認知症であると診断がおりました。
病院からすぐに介護認定を受けることや、今後の方針を行政に相談することを勧められました。
私は独身ですし、フリーランスで収入が一定でないので、母にかかる費用は自分で出してもらおうと思い、病院の支払いや交通費などは母の銀行口座から払い戻して支払いしていました。
もちろん必要以上の金額を母の口座から流用したりはしませんが、世間はそうは見てくれないということを、この後思い知ることになりました。母の銀行口座から預金が引き出せなくなったのです。
認知症が銀行にバレた!世間話からうっかり暴露してしまい…
死亡すると故人の銀行口座が凍結されることは知っていました。しかし認知症でも同じようなこと(すぐに預金が引き出せない)が起きることを、私は知らなかったのです。
そう考えて、私は母の定期預金を解約するために銀行に向かいました。
いつも行く銀行なので銀行員とは顔見知りでしたが、その時には母が同行しなかったため、委任状を用意して定期預金の解約を依頼しました。
銀行員から定期預金の解約理由を聞かれた私は
…と正直に本当のことを言ってしまったのです。
…と軽く聞かれたので
そう言った瞬間、相手が少し凍り付いたような、気の毒そうな表情になったのを、今でもよく覚えています。
認知症で銀行口座は凍結しない!一部利用制限がかかるだけだが…
銀行員からの意外な言葉に唖然としました。委任状があっても、どうにもならない…とも言われました。
ただし認知症の発症で銀行口座が凍結するわけではありません。口座の利用が制限されるだけです。
お金の引き出しや定期預金の解約するには制限がかかりますが、年金の振り込みはそのまま継続されますし、口座引き落としもそのまま続けられます。
私としては軽い世間話のつもりが「母が認知症である」と『告知』したことになってしまい、結果、母の預金を一切引き出すことができなくなりました。
この先 介護施設などを利用するかもしれないことを考えると、母の年金だけではとても足りるものではありません。預金を崩さない限りどうにも手の打ちようがない…私は頭を抱えました。
成年後見制度を利用して難を逃れる選択肢しかない現実に直面
その後、すっかり困りはてた私が愚痴を言いに行った役所の福祉課の職員から 成年後見制度の説明をされました。
成年後見制度は言葉だけは知っていたのですが、認知症患者の保護者にもそれが適用されることを私は知りませんでした。
成年後見制度が適用されれば母の銀行口座の問題がなくなることや、行政が無料の弁護士相談を開催しているという話を聞き、私は相談会を訪れてみることにしました。
相談会で担当してくれた弁護士によると 私のようなケースでは成年後見制度が適用されることを知って安心しましたが、「家庭裁判所への申し立て」…素人には高いハードルが待っていることを知りました。
さらに財産の管理自体は、裁判所が指定した司法書士や弁護士が行うというのです。つまり家族が財産を自由に使うことは出来ず、必要な時に管理人を通して介護費用など出してもらうという形になると。
さらにこの申し立てが通るまでには 数ヶ月から半年くらいの期間が必要とも言われました。
手続きが大変だとはいえ、この時点で私に残された方法はこれしかありませんでした。成年後見制度を使えば、少なくとも介護費用は母の財産から使えることになります。
認知症になったものの、母は元々身体が丈夫な人なので、この先どのくらい介護が続くか見当もつきません。
それを考えたら申し立てまでの数ヶ月くらいは問題ない…と判断して、成年後見制度(法定相続人)を使うことにしたのです。
成年後見制度はすぐに利用できるわけではなく、申し立てを行ってから成年後見人が選定され、その方を通じて年金を引き出せるようになるまで数ヶ月程度かかることが通常です。そうするとその間お金が引き出せないことになり、家族の方が認知症となった方本人に関する支払いで困窮してしまう可能性があります。
そういった実情を踏まえ、現在では全国銀行協会より成年後見制度の手続きを完了していないなど、やむを得ない状況であれば個別の事情に応じて本人以外の子や親族などからの引き出しに応じるのが望ましいと指針を出しています。
全ての金融機関がこの指針どおり、個別の事情を重視して対応しているわけではありませんが、金融機関によっては相談の上お金を引き出す必要性を考慮し、子が親の年金を引き出すことができる場合があります。
引用元:ファイナンシャルフィールド
もっと早く「後見人」という手を打っておくべきだった…
銀行の窓口の世間話で 認知症を口に出したことが、ここまで大事になるとは夢にも思っていませんでした。
しかしよく考えれば、こういう事態を予測して 母がしっかりしているうちに任意後見制度を利用できるようにしておけば、もっと気苦労も面倒も減ったはずでした。
私たちのケースでは、認知症が発症してからの手続きなので「法定後見」しか選択肢がありませんでしたが、母がしっかりしている(判断能力が十分な)うちに手続きをしていたら「任意後見」にできたのです。
任意後見人なら法定相続人よりももっと家族が介入して 親を支援することが可能なのです。
親が高齢でこれから介護問題が起きそうな人には、認知症認定が下ると預金がおろせなくなることを知っておいてほしいです。
そして転ばぬ先の杖として、先手を打って任意後見制度を利用することをおすすめします。
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