認知症の銀行引き出しで1000万円以上盗られた体験談
40代女性 これは私の祖母の死後、定期預金1000万円がそっくりなくなっていた出来事の顛末です。
祖母は40年以上一人暮らしで、ずっと自立した生活を送る元気な人でした。昔ながらの人付き合いのある下町に住んでいて、私の母が「一緒に暮らそうよ」と持ち掛けても「一人暮らしが良い」と決して譲らず、最期まで住み慣れた土地で暮らすことを選びました。
祖母は90歳を過ぎてから軽度の認知症の症状も出てきたので、訪問介護やデイサービスにお世話になっていました。
認知症になってから、お金を必要以上におろしたり、美容院に毎週のように通ったり、鍵や保険証をやたらとなくすなどが見られたため「そろそろグループホームに入居を考えよう」とケアマネージャーと相談をしていました。
しかし本人はそれを断固拒否するので「どうしたものか」と悩んでいるところ、祖母は脳出血で倒れ、あっけなくこの世を去ってしまいました。
1000万円以上の預金が引き出され他人の手に渡っていたことがわかり…
相続人は母一人だったので特に焦らずに遺品整理を進めていたときのこと。JAで定期預金にしていた1000万円が見当たらないことに気づきました。
「お金はJAで定期預金にしてあるから大丈夫」…と言って証書を大事にしまっているのを私も母も見て知っていましたが、それがないのです。
その他の財産を確認してみると 普通預金の残高が120万円程度になっていました。これも本来なら常に500万円程度は入っていたはずのものでした。
慌ててJAに問い合わせると、その定期預金は1年前に、ある女性に預ける形で全額下ろされていたことがわかりました。その女性は祖母の近所に住んでいるA子(60代女性)
早速母からA子に連絡を入れたのですが、A子からはガン無視されました。直接家に行っても、居留守を使われて出てきません。
そこでA子が祖母のお金を預かったいう「JAの証書」をコピーして、配達記録郵便で送りつけてみましたが、郵便物さえ受け取り拒否されて返送される始末でした。
このままでは埒が明かないので、私たちは弁護士に相談しました。そこでようやくA子も弁護士を立ててきて、双方の弁護士同士の話し合いが持たれました。A子側の弁護士は
…と主張してきました。
確かにJAからも「定期預金を全額下ろす前に何度も本人(祖母)に確認したので問題ないと判断しています」と言われ、祖母の直筆サインも確認しました。
定期預金解約より認知症の診断が先だから解約は無効!
そんな状況の中で、こちらの弁護士はこう主張しました。
その裏付けとして当時の主治医は
…という旨の診断書を書いてくれました。
ここまでの証拠集めには長い時間と労力がかかりましたが、これを見たA子側の弁護士はようやく軟化した様子を見せ始め、最初は「半額返す」…などと言ってきましたが、
…と伝えると やっと相手方は全額1000万円の返却に応じました。
親切な隣人を装う詐欺師には500万円以上の詐取の余罪もあったが…
普通預金の残高も年金が定期的に入ってくるにも関わらず、この2年で500万円ほど減っていることを確認しましたし、祖母が持っていたはずの金やプラチナのネックレス、指輪もすっからかんになっていました。
A子は祖母におかずを持ってきてくれたり、買い物を手伝ってくれたりと、お世話になっていたことは確かに事実ですが、その正体は「親切な隣人」を装って年寄りから根こそぎ金品を奪い取る詐欺師 あるいは泥棒だったのです。
定期預金の1000万円は戻ってきましたが、その2割は弁護士費用に消えましたし、その他のA子が詐取した金品は戻ってきませんでした。
一人暮らしの高齢者は特殊詐欺だけでなく、親切面して近づく悪党の餌食になりやすいです。本当に気を付けないといけないと肝に銘じた出来事でした。
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