インコの飼い主の寄稿です
通院などの移動の際、どのように愛鳥さんを運んでいますか?
持ち運びの利便性、また移動中の怪我防止のため、小さめのキャリーケースを利用する方も多いでしょう。
ところが、飼い主さんたちからよく聞くのが、「キャリーケースになかなか入ってくれない」「キャリーケースが嫌いで困っている」というお悩み。
実は、わが家の愛鳥も、以前はキャリーケースが大嫌いだったのですが、今ではすっかり大好きになりました。
どのようにしてキャリーケース嫌いを克服することができたのか、わが家の一例をご紹介します。
インコのお出かけキャリー克服作戦!中に入らない理由を探ってみよう
キャリーケースに入ってもらうことは、本当に必要なのでしょうか。
絶対に正解ということはありませんが、私は必要だと思います。
キャリーケースは、主に、外出などの移動の際に使われます。
普段、使っているケージのまま移動することができれば、愛鳥にとってはいちばんストレスが少ないだろうと思いますよね。
しかし、大きなケージを抱えて歩いたり電車に乗ったりすることは、決して楽なことではありません。
そして、ケージはゆとりのあるスペース設計となっている上、さまざまなおもちゃなどが設置されています。
そのため、移動の揺れで、鳥さんがけがをしてしまう可能性が否定できません。
リスクを最小限にとどめるため、移動は小さめのキャリーケースの方が、都合がいいのです。
体調不良による通院の場合、キャリーケースの他に、プラスチック製のケース(プラケ、いわゆる虫かご)を使う場合もあります。
プラスチック製のケースは、特に保温が容易なため、体温の維持が必要な病鳥さんの移動に最適です。
もしもの時のために、キャリーケースとプラスチック製のケースは準備しておきたいものですが、どちらも慣れていないと、入ることを嫌がる鳥さんが少なくありません。
病院へ行くためにケースに入ってもらいたいのに、鳥さんが断固として入らない…。
そんなとき、無理矢理入れてしまうと、鳥さんにとって大きなストレスになってしまいます。
これでは、鳥さんにとっても飼い主さんにとっても、いいことは何もありませんよね。
そんな困ったことにならないよう、キャリーケースやプラスチック製のケースに問題なく入れるようになってもらうことが必要になるのです。
インコはお出かけのキャリーをなぜ苦手なのか?鳥にとってのキャリーケースとは?
では、なぜ多くの鳥さんたちが、キャリーケースを苦手とするのでしょうか。
わが家の場合、主な理由として、以下の2つが考えられました。
理由1:インコがお出かけキャリーに慣れていない
キャリーケースは外出時にしか使われないので、鳥さんにとっては「たまに見かける(たまにしか見かけない)、いつまでも慣れないもの」という位置づけになってしまいがちです。
急に慣れない箱に「入って」と言われても、入りたくないですよね。
鳥さんは人間同様、知能が高く、デリケートな生き物です。
新しいもの、環境に慣れるには時間がかかるということを理解して、じっくり少しずつ慣れてもらうしかありません。
理由2:インコがお出かけキャリーにいい思い出がない(嫌な思い出がある)
鳥さんは、こちらの望む行動にメリットを見出さない場合、決してその行動をとってはくれません。
飼い主さんが差し出した手に乗ってくれるのは、大好きな飼い主さんに近づきたい、または、おやつをくれるかもしれない、というメリットを見出しているからです。
つまり、キャリーケースに入らないのは、キャリーケースに入ってもいいことがない、または悪いことが起きるかもしれない、と思っている可能性があるということです。
例えば、キャリーケースに入って出かけた先が病院で、診察で怖い思いをした、という経験しかなかったら、キャリーケースに入りたくないと思うのは、仕方がないのではないでしょうか。
また、歩行中や電車による揺れ、街中の物音などに、鳥さんが怖い思いをした可能性もあります。
個体差はありますが、車での移動の際、車酔いしてしまう鳥さんもいるようですので、移動には本当に気を遣います。
インコのお出かけキャリー嫌いをどう克服する?
では、実際に、どのように克服すればいいのでしょうか。こちらも、理由別に考えてみましょう。
克服法1:インコがお出かけキャリーに慣れていないなら徐々に慣らす
この場合は、慣れてもらえばいい訳ですから、キャリーケースを目にする、または中に入る機会を意識的に増やします。
外出を増やしてもいいですし、外出しなくても、遊び場としてキャリーケースを解放しておくだけでもいいでしょう。
入ってもらわなくても、常に鳥さんの目に入る位置に置いておき、まずは見慣れてもらいます。
見慣れたら、普段使っている大好きなおもちゃやおやつを入れて、キャリーケースの中で遊んだり食べたりしてもらう。
ステップとしては単純明快ですが、鳥さんの「嫌」「怖い」といった感情表現(ボディーサイン)を見逃さないよう注意しながら、慎重に進めます。
時間がかかりますが、決して焦らず、少しずつ段階を経ることが必要です。
克服法2:インコのお出かけキャリーにいい思い出・楽しい思い出を作る
この場合は、ひと工夫が必要です。
たとえば「病院へ行かない」という選択はできないので、病院以外の外出を増やしてみましょう。
行き先はどこでも構いません。
近所の公園でもいいし、ちょっと遠くへドライブしてもいい。
キャリーケースで大好きな飼い主さんとお出かけして、楽しかった、という記憶が積み重なれば、キャリーケースに対するネガティブなイメージが覆される望みはあります。
筆者は会社員なので、たまに在宅勤務をすることがあります。
天気がよければ、お昼休みを利用して、時々、愛鳥とプチ散歩に出かけています。
愛鳥をキャリーケースに入れ、徒歩十分ほどの近所の公園へ出かけ、十分ほど滞在し、帰ってきます。
キャリーケースの中の愛鳥に話しかけつつ、のんびり歩く道のりは、なんとも楽しいものです。
時間がとれない時は、ベランダにレジャーシートを広げ、ケージごと愛鳥と外に出て、食事をとりつつおしゃべりをします。
外に出ると、野鳥たちの声の他、車の走行音や自転車のブレーキ音など、色々な物音が聞こえます。
愛鳥はそのたびに細くなったり声を出したりするのですが、日頃から少しずつ、外の環境に慣れていく作業も必要です。
そして、半年に一度の定期健診は、飼い主の腕の振るいどころです。
電車で行くときも車で行くときも、移動中は常に声をかけています。
事故防止のため、キャリーケースはバッグに入れて運びますが、時々、少し開けて顔を見せ、中の様子も確認します。
顔が見えなくても、「今日はあったかいね」「ごめんね、ちょっと揺れたね」など、声を聞かせ続けることで、少しでも愛鳥の不安を和らげましょう(飼い主の株も上がります)
苦手は克服できたのか?キャリーケースが大好きな愛鳥へ変貌!
そんなことで、苦手なキャリーケースを克服できるの?と思われる方もいらっしゃるでしょう。
個体差はありますが、わが家の愛鳥は、いつの間にか、キャリーケースを見ると、自ら飛び込んで行く子になりました。
お出かけの準備をしている段階で、いそいそとキャリーケースに入り込み、中のおもちゃで遊んだり、おやつを食べたり、出たり入ったりして、楽しく遊んでくれます。
今や愛鳥にとって、キャリーケースは完全に「楽しいもの」になっています。
しかし、ここで油断してはいけません。
依然として通院のために使うこともあるので、嫌な思いをしたままでは、またもとのキャリー嫌いに戻ってしまうことも考えられるのです。
引き続き、通院以外の楽しいお出かけを継続し、キャリーケースの中にいる間は常に話しかけ、おやつも奮発します。
通院の際は特に念入りに、愛鳥の様子に気を配り、暑くはないか、寒くはないか、退屈していないか、怯えていないか、怒っていないか、観察とケアを怠りません。
もとより注目されることが大好きな愛鳥なので、飼い主がつきっきりで目を配り、声をかけてくれるキャリーケースの中が、心地よい環境になっているのでしょう。
キャリーケースという苦手を克服することで、愛鳥のストレスが減り、幸福度も上がるという、嬉しい結果になりました。

ひとつずつ苦手を克服する経験を積んでいくと、鳥さんは、苦手なものに慣れるまでの時間が短くなっていくものです。
高い知能と学習能力を備えている、ということを常に念頭に置き、まずはぜひ、愛鳥さんと一緒に、楽しいお出かけにトライしてみてください。