空き家の相続放棄をめぐる責任のなすり合い!争族直前体験談
30代男性 この話の空き家の持ち主である大叔父は、私の母方の祖父の弟です。このトラブル解決に奔走したのは私の両親で、母には姉が一人います。
晩年の大叔父は入退院を繰り返していましたが、面倒を見てくれる身寄りがいなかったので、何かある度に私の母が出向いて世話をしていました。
2018年末に大叔父は倒れて救急車で運ばれ、搬送先でそのまま帰らぬ人となりました。
大叔父の相続問題!家を誰が引き継ぐかで揉めに揉め…
大叔父は祖父が亡くなって祖母が施設に入居したときにこの家に移り住みました。
大叔父の葬儀の手配は私の両親と親戚数人が仕切り、死後事務手続きで多忙な日々が続いていましたが、それよりも彼らを悩ませていたのは相続の問題でした。
大叔父が住んでいた家、つまり母の実家の維持を今後「誰がどうするか?」問題が浮上したのです。
母の姉も嫁いで家庭がありますから、その古い家に住むつもりはありませんし、そもそも限界集落化した田舎にある古い家屋なので、リフォームが必須なほど老朽化が進んでいました。
誰も住まないにしても、相続すれば固定資産税が毎年かかります。そのため親族会議の最初の焦点は「固定資産税を誰が支払うのか?」でした。
親族で集まった時、私の両親はまず、古い家を解体することを提案しました。
更地にすれば建物にかかる固定資産税はなくなりますが、それは建物の税金分だけであって、更地にすると税の軽減措置がなくなり、固定資産税が跳ね上がります。
しかし更地にしないで老朽化したボロボロの建物を放置しておけば、近い将来特定空き家に指定されることは間違いありません。特定空き家に指定された場合も固定資産税が数倍に跳ね上がります。
特定空き家に指定されなくても、老朽化した家をそのままにしておけばこの先倒壊の危険性がありますし、万一それで近隣に迷惑がかかれば、損害賠償が発生する可能性もあります。
どちらに転んでも救いがない状況の中で
…となると、それ以上話が進まなくなるのです。
そこで解体費を見積もってもらったところ、300万円以上かかることがわかりました。
…となると、みんなうつむいてしまいます。相続するにしろしないにしろ、まずはあの家屋を解体しないわけにはいきません。
後に母はこう言っていました。
伯母も親戚たちも自分たちの生活がありますから、そういう気持ちになるのは致し方ないところ。それはわからないではありません。
親族の誰も知らなかった法定相続人!大叔父の一人娘登場
大叔父の遺産相続協議が膠着状態になっていたころ、思いもかけなかった急展開が。なんと、大叔父の一人娘が現れたのです。大叔父に子どもがいたことを、誰一人知りませんでした。
大叔父と親交があった友人の1人がたまたまそのことを覚えていて、葬儀後に娘さんの居所を探して、大叔父の訃報連絡をしたということでした。
離婚後の大叔父は子どもと一度も会っていなかったようですが、娘のことをいつも気にかけていた…とその友人は言っていました。
その後、大叔父の一人娘を迎えて、再び親族会議が開かれました。
娘さんも家庭を持っているので、この古い家に居を移すつもりはないとのことで、私の父が次の提案をしました。
今このタイミングなら相続放棄すれば問題の一部を手放すことができるはず。家庭裁判所で正式に手続きをすれば、負債は最小限におさえられると思うのだが、どうだろうか?…との主旨の提案です。
法定相続人である大叔父の娘さんはもちろん、同席した親族も全員がこの意見に合意したため、この問題にはピリオドが打たれることになりました。
負動産は国庫帰属にすることで相続問題が終息した
現在、大叔父の家があった土地は更地にされ、娘さんによるさまざまな手続きにより、土地は国が管理しているということです。
この出来事を通して私が感じたことは、身寄りの少ないおひとりさまの親戚がいる人は 早めの終活を勧めるように助言した方がいいということです。
昨今は晩婚化が進んで子どもがいない夫婦や、生涯独身の人、離別・死別によるおひとりさまが多いです。
おひとりさまで身寄りのない親戚が亡くなれば、自動的に親族に遺産相続問題が降りかかります。それがプラス相続ならいいですが、今回のようなマイナス相続では、遺族は目も当てられません。
この体験で、私は相続や終活のトラブルを最小限に防ぐため、日頃から親戚同士で「相続をどうするか?」について話し合う機会を設ける重要性を学びました。
相続人全員が不動産の相続放棄をしたら?空き家の管理義務は?
不動産を相続する権利のある相続人(被相続人の子、親、兄弟姉妹)全員が、被相続人が所有していた実家などの不動産の相続を放棄すると、その不動産は国に継承されるのです。
ただし、不動産を国庫に帰属させる手続きを行うには、弁護士や司法書士などの第三者を「相続財産管理人」とする申請を行い受理された後、その不動産に相続人がいないことを法律的に確定させなければなりません。
また、たとえ相続放棄が成立して固定資産税の支払い義務がなくなったとしても、相続財産管理人が管理を開始するまでは、空き家の管理義務自体は所有者に残る可能性が大きいのです。そのため、万が一空き家をめぐって周辺の住民とトラブルが生じたり、賠償を要したりする事故が起きてしまった場合は、その責任を負わなければならない可能性があります。
相続放棄をしたとしても、相続財産管理人が決まるまでは、空き家の管理義務が完全になくなるわけではないため、空き家を放置しておくわけにはいきません。もし遠方に住んでいるなどの理由で、相続財産管理人が管理を開始するまで自身での空き家の管理が難しい場合は、専門業者への依頼を検討してみましょう。
引用元:日本空き家サポート